ふと目を覚ますと、身体の左側がぽかぽかと暖かかった。体ごと左側に向くと、私のほうに顔を向けて眠る彼が静かに寝息をたてている。

 僅かに開いたカーテンの隙間から見えた窓の外は、まだぼんやりとほの暗い。目を覚ますには、まだ少し早そうだ。

 私は彼に視線を戻すと、閉じた瞼にかかっている彼の前髪を指でそっと掻き上げた。

 彼は起きているときよりも、眠っているときの顔のほうが《あのひと》に似ている。
 彼は《あのひと》より鼻筋が高いし、目尻はキリッとしているし、起きているときの顔は、彼のほうがイケメンかもしれない。そう言ったら、《あのひと》は、拗ねるだろうか。

 最近は、写真で確かめなければぼんやりとしてうまく思い出せなくなってしまっている《あのひと》の顔。それを懸命に思い出しながら、ふっと笑う。

 どうしてか、私は最近少しおかしくなっているらしい。
 もうずっと、彼と《あのひと》のことが頭の中でごちゃごちゃになっていて。《あのひと》がどこに行ってしまったのか、何故いなくなったのか、わからなくなる。