「ずっと私のそばにいる?」
彼女が、僕のことを迷子の子どものような目をして不安そうに見上げる。
「いるよ」
優しくゆっくりとそう答えたけれど、彼女の瞳に浮かぶ不安の影は消えなかった。
「ずっと、ずっと永遠に?」
「うん、ずっと、ずっと永遠に」
何度も確かめるように訊ねてくる彼女を、ブランケットごとぎゅっと抱きしめて、耳元にささやく。僕の腕の中で熱く深い息を吐いた彼女は、ようやく少し、心を落ち着けたようだった。
「大好きだよ、葉ちゃん」
甘えた声を出して、彼女が僕の胸に額や頬を摺り寄せてくる。肌に触れる彼女の頬や、前髪がくすぐったくて、我慢できずに吐息とともに笑い声が零れた。
「僕も仁美のことが大好きだよ」
腕の中から、悪戯っぽい目をして僕を見上げる彼女の額にそっと口付ける。
そうして今日も、僕たちのまやかしの夫婦生活が始まる。