第5章
なんで、そんな事は単純明快な事だった。過去のことだろう。無理をさせてはダメだと僕は感じ諭すように優しく接した。次の日僕は大学に行くために朝早くここを出た。たわいのない毎日を過ごしているある日一通の手紙が届いた。高校の同窓会への招待の手紙だ。
「さや、同窓会行かない?」
「行きたい、、かな?」
珍しく彼女も乗り気だった。同窓会当日、僕達は緊張しながらも会場へと向かった。
周りには懐かしい面々がいっぱいあった。そうは言っても、僕も彼女も静かで友達は限られていたため話しかけてくる人はほとんどいなかった。そんな時だった。
「あ!さや!久しぶり!!」
白石由依。さやの限られた友人だ。そんな彼女が言った些細な一言で会場は青ざめる。
「ねぇ、さやってお母さん殺したんでしょ?」
唐突だった。さやはその場に立ち尽くしていた。会場は少し沈黙が続いた後ざわつき始めた。僕は頭の回転が追いつかなかった。
「殺し…」
さやはごもっていて何を言っているのか聞き取れなかった。
白石由依がさやの肩を触ろうとした瞬間さやは会場から出ていってしまった。僕は追いかけるように会場のみんなへ頭を下げその場を後にした。さやを追いかけて行くとそこはどこかの寂れた港のような場所だった。
「さや!大丈夫。僕はそんなこと信じてないから。」
そう僕が叫ぶと彼女は振り返った。
「本当に殺したって言ったらどうする?」
彼女の目には嘘なんてなかった。
僕は何も言えなかった。言える訳がなかった。いつのまにか彼女を抱きしめていた。
家に着くとすぐに彼女は寝室へ向かい寝てしまったようだった。僕は今日のことを受け止めきれずリビングで一杯飲んだ所で眠りについた。