次の日浅沢さんは学校に来なかった。僕は自分のせいだと感じた。5時のチャイムが鳴った後も1人の教室となった。僕は彼女の家に向かった。チャイムを鳴らすがでない。何度押しても。すると横の家のおばさんが出てきた。
「もう帰ってこないよそこの人は。昨日もう帰らないでどっか行く様子だったから。」
僕は顔から血の気が引くのを初めて実感した。
「どこに、どこに行ったかわかりませんか?」
「分かりっこないよ。あそこの家は特殊だったからね。」
僕は最悪の場合をそうていしていた。僕のせいで。僕はおばさんと別れ周りにいる人たちに聞いてまわった。高校のクラスの集合写真を見せた。1日では特に情報を得れなかった。
次の日もその次の日も聞いて回った。そんな生活をして、何年何ヶ月、僕はその間に受験も終わり一人暮らしを始めた時くらいだろうか。やっと浅沢さんを見たという情報にありつけた。
その人の話では、現在地から電車で約20分くらいの場所で毎日のように見るとのこと。それから毎日僕はそこに向かった。4日ほど経ったある日その時は訪れた。浅沢さんがいたのだ。だが、目の前にしてどうすればいいのか分からなくなった。声をかけるべきなのか。かけるとして何て言えばいいのか。でも、体は正直だった。見るや否や彼女の方へと走っていったのだ。彼女の後ろへと行くと彼女は振り返った。
「坂田くん?」
彼女はそう言った。僕は涙を流した。
「ごめん。ごめん。僕のせいで。」
彼女は僕をだきしめてくれた。そして今住んでいる家まで連れて行ってくれた。
「ここが今私の住んでいる所。決して広くないけど我慢してね。」
それは大学生の一人暮らしそのものだった。
「ずっと探していてくれたの?」
「うん、あの日からずっと。」
そういうと彼女はうつむき涙を流した。
「ありがとう。ごめんね。心配かけて。でも大丈夫だよ!今は元気にやってるし」
安心した。でもひとつ気がかりなことがあった。
「ねぇ、聞きづらいけどお母さんは?」
「お母さんは、亡くなったの。少し前に。」
その言葉を聞いて僕はハッとした。彼女の幸せは母親が死ぬことだったと改めて気づいた。僕にとっての不幸が彼女にとっては幸せだったんだ。僕はそれからというもの彼女の元へと通った。半同棲状態だった。
大学の休みの日僕は彼女と映画を見に行った。映画に魅了された彼女の横顔は綺麗だった。右目から一粒流れていた。
映画が終わり映画館の外へ出た。
「あー面白かったね!やっぱ主人公があそこであんな行動に出るなんて。ね!」
「あ、あぁたしかに面白かったよな」
「あーもうちゃんと見てなかった、もういい!」
君に見惚れていて見てないなんてキザなこと言えるやつがモテるんだろうな。僕には言えそうにない。それからゲームセンターへと行きクレーンゲームをしたりして時間を潰した。
「すっかり暗くなったね。これからどっかご飯でもどう?」
いつのまにか僕は彼女を自分のものにしたいと思うようになっていた。
「うん!いいね!なにたべるー?」
飛び跳ねながらそう言う彼女が僕はとても愛おしかった。
僕たちは近くの少し洒落たレストランに入った。料理が運ばれてきた。そんな時だった。
「ねぇ、坂田くんって何で私に優しくしてくれるの?」
おもむろに彼女が問いてきた。
「わからない。でもほっとけないんだ。」
「んーそっか。」
少しの間沈黙が続いた。
「あ、あのさ、浅沢さん。僕はあの頃から君が好きだったんだと思う。僕と付き合ってくれませんか。」
何ていきなりなんだって感じるだろうな。
彼女はうつむき暗い表情をした。僕は何てバカなんだろう自分を恨みたくなるほどだ。
だが、彼女の返答は思っていたものとは違うものだった。
「はい。こんな私で良ければ。」
嬉しかった、こんなに嬉しい事は人生で初めてだった。
「あ、あ、ありがとう。改めてよろしく」
そんなオドオドしている僕をみて彼女は笑った。その楽しそうな彼女をみて僕は笑った。
レストランを後にして彼女の家へと向かった。
「今日はありがとね。なんなら家泊まって行きなよ。」
玄関で見送ろうとすると彼女がそう言ってきた。
「あぁそうする。お邪魔します。」
いつもなら断るのだが今日は気分が違っていた。
普段通り会話を交わし、夜の12時を過ぎた頃、僕らは寝室へと向かった。一つのベットに2人で寝転がった。僕は彼女の唇を奪った。彼女もまんざらではなさそうだった。彼女の胸へと手を伸ばした。
「いやだ!!」
いきなり、彼女が大きな声で叫んだ。何が起きたのか僕には理解できなかった。雰囲気が雰囲気だったので許されるかと思ったのがバカだったのだろうか。
「あ、あぁいやごめんね。陸。なんかしらけさせちゃったね。ごめん。」
そう言う彼女の目は怯えた目をしていた。