3章.変化
そんなことがあった次の日もいつも通り学校へといった。なんも変わらない日常。
「さーや!なんかあった??暗い顔してるけど。」
白石由依私の限られた友人だ。
「いや、なにもないよ。大丈夫。ありがとね!心配してくれて!」
由依は目線を下に落としていた。私もその目線を追ってみると私の手首にはおじさんから強く握られた青あざができていた。私がサッと隠すと、由依は私を抱きしめた。
「ごめんね。ずっと気づいてたの。さやがそういうの受けていること。ずっと。でも、わたしから言うのは違うと思って我慢してたの。ごめんね。ごめんね。」
由依はかなり張り詰めたように私に謝ってきた。
「私は何もできない。できないと思う。でも一人で詰め込まないで。」
私は思わず嗚咽を含みながら思いっきり泣いてしまった。クラスのみんながこっちを向いていた。変な奴らだと思われただろう。でも止めることはできなかった。
「由依。ありがとう。そうやって言ってくれるだけでも嬉しいよ。」
私は愛ってものを初めて感じたかもしれない。学校は私にとって心が落ち着く場所だった。家という地獄に比べたら。学校が終わりいつもの5時のチャイムがなってみんな帰っていった。一人を除いて。坂田くんは私の所へと来た。
「浅沢さん。大丈夫?」
今日の朝のことでずっと心配してくれていたのかなって考えるそれだけで心が満たされた。人に心配されるのは悪いことがあるからであって良いことではないと思っていたが心の満たされるものなのだと実感した。
私は坂田くんに全て正直に話した。母親が憎いことも。死んでしまえとすら思っている事も。坂田くんは文句ひとつ言わず聴いてくれた。私が言い終わると口を開いた。
「よし、行こう。家に。」
私はその言葉の意味が理解できなかった。
でも理解せざるを得なかった。彼の行動は早かった私の荷物を持って走っていった。
彼の顔は決していつもの優しいおとなしい人とはかけ離れていた。まるで決戦でもいくかのような。
私の家に着くと坂田くんは玄関のドアを開けた。いつも通り知らない靴が増えていた。
中に入ると昨日のおじさんと母親がいた。私は恐怖で逃げ出したかった。でも坂田くんが手を握っていてくれた。坂田くんより先に母親が口を開いた。
「お、さや。あんたもとうとう男を連れ込むようになったかい。いいよ。使いなこのベットでも。」
坂田くんの雰囲気がガラッと変わるのを感じた。そして今まで聞いた事もないくらいの怒り声を出した。
「お前はそれでも母親か!さやさんは苦しくて逃げ出したくても学校ではそんな仕草一切見せないんだぞ。お前みたいなくその世話してやんないといけないのに。」
すかさず母親が口を開いた
「なんだなんだそういう話か。うっさいんだよ。出て行け。人様の家の事情に口を挟むなクソガキが。」
そう言われるといきなり坂田くんは膝をついた。
「ごめんなさい、引くわけにいかないんです。彼女をもう傷付けないでくださいお願いします。」
坂田くんは土下座をして涙ぐんだ声でそう言った。
「は?なんなんだよ。お前に何がわかるんだよこの子の。この子はこの状況に慣れてんの。だからいいんだよ傷つきゃしない。」
「傷ついてます。あなたが愛さないから。」
「くっそかったりぃな。わかったわかったもう傷つけないよ。だからさっさと帰れ。」
坂田くんは私の方をみて泣き顔でニコッとしてまた明日とだけ言って帰っていった。
4章.