2章.気づき
坂田くんと別れ私は地獄へと着いた。玄関を開けるとまた知らない靴が増えていた。それを見た時点で私は逃げ出したかった。覚悟を決めて中に入っていくと。乱れた母の姿と上裸の男がいた。私の方を見て上裸の男が声をかけてきた。
「お前が娘か。こっちこいお前も可愛がってやるからよ。」そう言いながら立ち上がり私の方へ向かってきた。
「いやだ!!!!」
私は思わず大きな声を出してしまった。すると男は私に飛びかかり口を押さえてきた。
「静かにしろ。悪くはしねぇからよ。」
上裸の男はそう言い私の制服のボタンを取っていった。私はこの男よりこの状況でタバコを吸いながら傍観している母親の方が憎かった。
ボタンを取り終わると同時ぐらいに家のチャイムが鳴った。男は服を着て不機嫌そうに玄関へ行った。私は今しかないと思い玄関の方へ走り出し外へと出ていった。男はかなり焦った様子だったが母親は私を止めようなどとはしなかった。逃げ出したのは良かったけれども行くあては一切なかった。警察にいってもまたあの地獄に戻されるだけだろう。私が途方に暮れていると知らないおじさんが声をかけてきた。
「どうしたんだい。そんな着崩して。こんな時間に外にいるなんて危険だよ。」
おじさんが救世主に見えた。私は今にも泣き出しそうだった。
「私の家に来なさい。大丈夫怖かったね。」
何も言ってないけれど雰囲気で察したらしく私を家へと連れて行ってくれることとなった。でも、行った先は私の家だった。何が起こったのか分からなかった。おじさんは味方ではなかったのだろうか。
「お、おじさん、ここって。」
「あぁ私の家だよ。さぁ中に行こうか。」
私の腕を引っ張り無理矢理家の中へと入れられた。倒れながら玄関へと入ると、見下ろされている感覚があった。見上げるとそこには母親がいた。
「ありがと真司さん今度は楽しみにしててね。」
母親がおじさんにそういうとおじさんは外に出てどっか行ってしまった。
「ねぇ、さや。なんで逃げだしたの?なにか嫌なことでもあった?」
まるでペットを見るかのような目で見つめてくる。こういう時に反抗すると殴られるそんなのは分かりきった事だった。
「ごめんなさい。もう逃げません。」
「それなら良いの。次やったら。ね。」
母親は私にそう言って中へと入っていった。
どうして私はこんな目に遭わなくちゃいけないの。どうして私は愛してもらえないの。どうして坂田くんは愛されるの。どうして。どうして。私はなぜあの時泣いたのか気づいた。その日私は声を押し殺して泣き狂った。