と言いながら歩きだした。悩みを相談したはずが、悩みが増えてしまった。そんな状態だったのでその日は講義に集中することが
できず、あっという間に一日が終わってしまった。家に帰って、改めて考えてみた。私は、前田先生をどう思っているのだろうか。
もちろん、嫌いではない。いい先生だとは思うし、優しくもしてもらった。だがそれだけで恋愛という意味での好きになる
だろうか。そんなことを考えたことはなかった。それは、私の中ではそもそも私なんて相手にされないと考えていたからだ。
だが、先生の思わせぶりな言い方を聞く限りでは、私は好意を持たれているような気がする。それに、食堂で会った時には私に
彼氏がいないかを心配しているようだった。全く興味のない女性に彼氏がいるかどうかなんて、考える必要がないのでは
ないだろうか。と、ここまで考えて思ったのだが私はやはり自分の考えを前田先生の行動に委ねている、と思った。私が前田先生を
どう思うか、ではなく、前田先生が私に対してどう接してくれたのか、というところから答えを出そうとしていた。それでは、
昼にみほに言われたことと同じになってしまう。そんなことを考えているともう何も考えたくないと思うようになり、その日は
終わった。
それから、一週間ほどは同じことをずっと考えていた。だが結論としてはどうしても同じになってしまう。果たして、私は
前田先生に恋をしているのだろうか。自分のことが自分でわからなくなってしまうなんて馬鹿げた話ではあるのだが、実際に
起こってしまっているのだから仕方がない。そんな状態がずっと続いて、いよいよそのことについて結論が出た。そうだ、
前田先生に聞けばいいのだ。聞くと言っても、私が前田先生をどう思っているかではなく、前田先生が私をどう思っているかを
聞けば良いのだと思った。普段の私であればこんな考えに及ぶことはないのだが、この一週間の自身への問答のせいで私はどこか
おかしくなってしまったようだった。そうなると善は急げということで、前田先生を探した。だが大学の先生がどこにいるかを
把握していなかった。教授クラスの先生であれば自身の部屋を割り振られているだろうが、顧問のような立場の前田先生がどこに
いるかなんてわからなかった。次の講義の後にでも聞くかな、と思い大学から帰ろうとすると、大学の中にある自動販売機の前に