こんな風に男性から直接褒められた経験なんて今までなかったので、少しドキッとした。だが前田先生はずっと年上だし、
そもそも私のことを恋愛対象だなんて思っていないだろう、と思った。そんなことを考えていると、前田先生が続けた。
「でも少し安心しました、吉田さんに彼氏はいないんですね」
安心した?どういうことだ?と考えた。私に彼氏がいないことで前田先生が安心する要素なんて何もないじゃないか。そんなことを
考えていると前田先生はご飯を食べ終わったようで、私に一言挨拶をして、いなくなった。
前田先生の発言に少しもやもやとした気持ちにはさせられたものの、深く考えたところで意味はないと思い、食事を済ませた。
そしてその後も特に何事もなく日々は過ぎて行ったのだが、ある時の前田先生の講義でのことである。前田先生は講義の内容を
ただ辿るだけではなく、時折雑談も挟んでくるタイプの先生だ。そこで話された内容が「付き合うとしたらどんなタイプがいいか」
と言うような話だった。先生は、生徒全員に対して一般論を繰り広げている。そして一通り話した時点で、先生が言った。
「こんな風に偉そうに語ったけど、先生にはパートナーはいないんだけどね」
そんなことを先生が言うと、男どもが「先生はどんなタイプの女性がいいのか」というような野次を飛ばした。すると先生は少し
悩んだ後に、話し始めた。
「ん-、そうだな。年齢は、自分より下がいいかな。どれくらい下が良いとかってことはないけど、下限は特に考えていないよ。
見た目はあんまり気にしないけど、あまり性格がしっかりしすぎていない人の方がいいかな。例えばだけど、うっかり大事なものを
落としてしまうような人とかね」
そう言いながら、先生がこちらを見たような気がした。その瞬間、私はドキッとした。先生より年下の、落とし物をする女と
言うのは私のことではないだろうか。しかも、先生がこちらを見ているような気がする。そう思っていると先生は目をそらして
「ちょっと例が具体的すぎたかな。過去に好きになったことがある女性がそんなタイプだったから、ペラペラと話しちゃったよ。
雑談はこれくらいにして、講義を続けるぞ」
と言った。その日、私は講義をしっかりと受けられなかった。そして講義が終わって、私は少し考えてみた。果たして、前田先生は