誰だ?と思いふいに見るとそこには前田先生がいた。別に大学の食堂は生徒しか使ってはいけないような場所ではない。なんなら
外部から来た人が使ったところで気づかないような場所ではあるのだ。
「ここ空いてるよ。あ、それとも誰かと一緒だったかな?」
そう言われて見てみると、確かに前田先生の前の席が空いていた。これはありがたいと思い私は席に向かった。
さて、席は確保できたのでメニューを選びに行くかと思い席を立った。といっても学食のメニューにそんなに華やかなものなんて
ないので、普通のランチセットにした。そして席に戻ると、まだ前田先生はいた。というか、ちょうど食べ始めたぐらいの
タイミングのようだ。特に私から話しかけることもないので、黙々とご飯を食べ始める。
「大学には、もう慣れましたか?」
不意に、前田先生の声が聞こえた。顔を上げると、私に話しかけているようだ。私はもう大学に通い始めて二年目なのだから、
つい最近来たばかりのあなたよりも慣れていますよ、と思いながらもそんなことは言わずに、「はい」とだけ返事をした。
すると前田先生が
「吉田さんは二年生ですかね?それなら慣れてるはずですよね。なんなら、つい最近来た私よりも慣れているはずだ」
と言ってきた。同じことを考えていたようで、少し笑ってしまった。そんな感じで、会話をしながらご飯を食べ進めていく。
すると、前田先生が不意に驚くべきことを聞いてきた。
「ところで吉田さんは、大学に彼氏はいないんですか?」
なぜそんなことを聞いてくるのだろうと思った。そもそも、私は大学どころか彼氏自体がいない。不意にこんな質問をしてくる
なんて少し失礼だな、思いながら答えた。
「大学に、ではなく彼氏自体がいませんよ」
「え?そうなんですか?それは失礼しました。いつもはご友人といたりするのに、今日は一人で学食に来られていたので彼氏と
待ち合わせなのかと思いました」
「講義によっては友達とタイミングが合わないこともありますから。あ、前田先生、私は良いですけど年頃の女の子に彼氏は
いないのか?なんて聞いたら失礼に当たるかもしれませんので気を付けてくださいね」
「え?ああ、それは確かに、失礼しました。吉田さんみたいにお綺麗な女性に彼氏がいないとは思わなかったもので、つい失礼な
聞き方になってしまいました。お許しください」