「突然行かなくなったら不思議に思うのも当然ですよね、すみません。また暇があったら行こうかと思いますので、その時は
お願いします。行かなくなった理由は、ちょっと失恋してしまいまして」
「え、ああ、そうなんだ。若い子の恋愛はよくわからないけど、失恋してしまったらそれは落ち込むよね。でももし来てくれるなら
今度はお茶でも準備しておくから、ぜひ来てよ。手伝ってくれなくてもいいからさ」
「はい、私が失恋した相手は、年上で優しくて、でもちょっと難しい関係性の人で・・・。その人は、私から好かれていることも
しらないはずなんですけどね」
「そうなの？それなら、思いを伝えたらなんとかなったりしないのかな？あ、相手にはパートナーがいるとかかな？」
「いえ、パートナーがいるかはわかりませんが、好きなタイプが私からはだいぶ離れていたので・・・。無理なのかなって思って」
やや自暴自棄になっていたのか、行き過ぎとも言えるレベルまで話をしてしまった。すると前田先生が
「吉田さんみたいに素敵な女性だったら、タイプなんて関係ないと思うけどね。別に好きなタイプ以外とは付き合えない、なんて
人はあまりいないだろうからさ」
「そうですか。じゃあ、好きです」
「え？」
言ってしまった。いくら自暴自棄になっていたとはいえ、こんなタイミングで口が動くとは思わなかったがもう言ってしまった
ことは取り消せない。この場から逃げたい気持ちでいっぱいではあったが、ここで逃げたら絶対に良いことはない。私がじっと
待っていると前田先生が言った。
「えっと・・・それは、俺をってことかな？恋愛的な意味で？」
私は小さく頷いた。すると前田先生がどうしたものかという表情でこちらを見てくる。逃げたいが、私も足がすくんで
動けなかった。少しして、前田先生が話し出した。
「えっと、まず前提として。吉田さんとお付き合いすることはできない。それは吉田さんに魅力がないから、とかではなく、
やはり講師と生徒が付き合うなんてことはあってはいけないことだと思うからだ」
前田先生ならそう言うだろうということはわかっていた。だからこそ言えなかった。だがもう今の私はどちらかと言うとこの恋を
終わらせたいと思っていたのだ。フラれてしまえば気が楽になるかもしれない。そんなことを思いながらじっと話を聞いた。