そんな話をみほから聞いて、なるほどとは思ったのだが、実際にどうすれば良いかはわからなかった。そこで今の私にできる
ことは、前田先生をサポートするくらいしかないだろうと思った。そこで翌日以降は、前田先生を見かけては必ず声掛けをする
ようにし、講師室に行っては前田先生にやることがないかを尋ねたりもした。最初のうちは戸惑っていた前田先生も段々と私に
頼るようになってきてくれて、うまくアピールできているのではないかと思うようになった。そんなある時、前田先生が言った。
「こうして吉田さんが手伝ってくれる状況はすごく有難く思っているけど、このままだとあんまり良くはないかな」
「なんでですか?」
「吉田さんが卒業したら、一人で仕事ができなくなっちゃいそうだよ」
どうしてこう、前田先生は母性本能をくすぐるようなことを言ってくるのだろうか、と思った。そんな風に思ってもらえることの
喜びはもちろんあったが、どう答えたらいいかわからなかった。
「別に、私が卒業したら他の人に頼めばいいじゃないですか」
「いやいや、俺から誰かに頼んだりはできないよ。そうだ、それで思ったんだけど、どうして吉田さんは俺のことを手伝って
くれるの?いくら手伝ってくれても、講義の評価はきちんと付けるよ?」
そんなことのために手伝っていると思われていたのかと思うと、少し気落ちした。だがそんな態度を前田先生に見せるわけには
いかない。
「そんなことわかっていますよ。こんな手伝いくらいで評価を上げてもらおうだなんて思っていませんから」
「そうなんだ。じゃあ、なんで吉田さんは俺のことを手伝ってくれるのかな?」
核心に迫る質問をされた。さて、どう答えるべきか。ここで「好きだから」と言えればそんな楽なことはない。だが正直に伝えたと
してもいい結果になるとは思えない。どうしたら良いか悩んだ挙句に、私は質問を返した。
「その前に、前田先生がお付き合いをするとしたら、どんな人がいいですか?性格や見た目、年齢とか」
「ええ?どうしたの?急に。そうだな・・・しっかりとしている人が良いかな。この歳になったらあんまり見た目を意識したりは
しないよ」
なんともぼんやりとした回答が返ってきた。もう少し核心をつけないかと悩んだが、どう伝えたらいいかわからなかった。すると、
吉田先生がさらに追加で言ってきた。