「奈々ちゃんは、今は彼氏はいないんだよね?誰か好きな人はいないの?」
逃げようと思っていた話題から逃げられなくなってしまった、という感じだ。好きな人、か。だがそもそも前田先生のことを
好きかどうかもわかっていないのだから、この場で言う必要はないと考えた。
「別に好きな人とかはいないよ」
「まあでもそうだよね。大学って高校みたいにしっかりとしたクラスがあるわけじゃないから、クラスのなんとか君が好き、
みたいなことにはならないよね」
なんとか話を切り抜けられたようだ、と安心した矢先に更なる質問が飛んできた。
「じゃあさ、どんな人がタイプとかはあるの?」
好きな人のタイプか。今まで、考えたこともなかった。そもそも今まで付き合ってきた彼氏のこともこういうところが好き、とか
そんな理由で付き合ってきたわけではないので、こんな人が良いというような明確な答えはなかった。
「私、どんなタイプが好きとかあんまりないんだよね」
私がそう言うと、友人は驚いたような顔で更に聞いてきた。
「えー?でも、例えば濃い顔がいいとかみたいなのはあるでしょ?じゃあ、私が一つずつ質問していくから答えてね。まず、年齢は
どう?」
「うーん、同い年か年上がいいかな。年下はどうしても子どもに見えちゃって」
「なるほどね。年齢差は気にしないのかな?あと、こんなことをしてくれる人が良いとかはある?」
「年齢差はあんまり気にしないかな、その人が魅力的であれば年齢なんて関係ないもの。こんなことを・・・うーん、私なんかを
好きでいてくれるならそれだけで十分かな」
「そっかそっか。後は、大事なところだけど容姿の面はどうかな?」
「ん-、目は細い人がいいかな。体型はあまり気にしないけどね」
そんな話をしていると、みほが何やらニヤニヤとこちらを見ている。
「みほ、ニヤニヤしてどうしたの?」
「ん-ん、なんでもないよ?」
ここで話は終わりになった。そしてみんなと別れて家に帰っている時に今日の自分の話を思い返してみた。私が好きなタイプは、
年上で目が細くて、私のことを好きになってくれる人・・・。ここではっとした。みほがニヤニヤしていたのはそういうこと
だったのか。
そこでみんなが別の話をしている間に、私は今までのことをまた思い返してみた。まず、みほに前田先生のことは話した。そして