私、吉田奈々は大学二年生。今の私には彼氏がいない。今まで彼氏ができたことは数回あったが、どの彼氏のことも『大好き』とは
言えなかった。相手から告白をされて、断るのも申し訳ないからとりあえず付き合ってみる、といった感じだ。いざ
付き合ってみて、手を繋いだりしても漫画やドラマのようにドキドキしたりもしなかったし、こちらから何かをしてあげたいと
思うこともなかった。それでも付き合っていけばそのうち、と思ったのだが特に変化はなく、一ヶ月と持たないうちにお別れを
告げることが多かった。告白を断ることは申し訳ないとは思っていたが、好きでもないと思っている人と付き合うことの方が
もっと申し訳のないことだと思ったからだ。そんなこんなでいつのまにか大学二年生になってしまった。いまだに恋を知らない
女子大生、なんて言ったら少し綺麗に聞こえるかもしれないが、要はまだまだ子どもなだけなのだろう。だが、恋なんて無理にして
良いことではないし、そもそもそんな器用に恋なんてできなかった。そのうちいい出会いがあるのかもしれないな、なんて考え
ながら大学の構内を歩いていると、突然後ろから声が聞こえた。
「えっと、吉田さんって確か君だったよね?」
振り向くと、そこには先生らしき男の人がいた。なぜ急に私は声をかけられたのだろうか。
「ああ、急に声を掛けてごめんね。この定期券、君のかな?」
そう言って先生が出してきたものを見ると、そこには私の定期券があった。どうやら、知らぬ間に落としていたようだった。
「定期券は落としたら大変だから、気を付けるようにね、吉田さん」
そう言いながら私に定期券を返してきた。なぜ私の名前を知っているのだろうか、と思ったがよく考えれば定期券に名前は
書いてある。どこかで見たような人だな、なんて思いながらもお礼を告げて、次の講義の教室へと向かった。そして、教室に着いて
先生を待っていると、驚いた。先ほど定期券を拾ってくれた人が現れたのだ。
「えー、みなさん、こんにちは。突然ではありますが、今日からこの講義の講師を担当させていただく前田と言います。これまで
みなさんに教えてくれていた田中先生は急病で長期休暇を取ることになりましたので、代打で私が担当することになりました。
言えなかった。相手から告白をされて、断るのも申し訳ないからとりあえず付き合ってみる、といった感じだ。いざ
付き合ってみて、手を繋いだりしても漫画やドラマのようにドキドキしたりもしなかったし、こちらから何かをしてあげたいと
思うこともなかった。それでも付き合っていけばそのうち、と思ったのだが特に変化はなく、一ヶ月と持たないうちにお別れを
告げることが多かった。告白を断ることは申し訳ないとは思っていたが、好きでもないと思っている人と付き合うことの方が
もっと申し訳のないことだと思ったからだ。そんなこんなでいつのまにか大学二年生になってしまった。いまだに恋を知らない
女子大生、なんて言ったら少し綺麗に聞こえるかもしれないが、要はまだまだ子どもなだけなのだろう。だが、恋なんて無理にして
良いことではないし、そもそもそんな器用に恋なんてできなかった。そのうちいい出会いがあるのかもしれないな、なんて考え
ながら大学の構内を歩いていると、突然後ろから声が聞こえた。
「えっと、吉田さんって確か君だったよね?」
振り向くと、そこには先生らしき男の人がいた。なぜ急に私は声をかけられたのだろうか。
「ああ、急に声を掛けてごめんね。この定期券、君のかな?」
そう言って先生が出してきたものを見ると、そこには私の定期券があった。どうやら、知らぬ間に落としていたようだった。
「定期券は落としたら大変だから、気を付けるようにね、吉田さん」
そう言いながら私に定期券を返してきた。なぜ私の名前を知っているのだろうか、と思ったがよく考えれば定期券に名前は
書いてある。どこかで見たような人だな、なんて思いながらもお礼を告げて、次の講義の教室へと向かった。そして、教室に着いて
先生を待っていると、驚いた。先ほど定期券を拾ってくれた人が現れたのだ。
「えー、みなさん、こんにちは。突然ではありますが、今日からこの講義の講師を担当させていただく前田と言います。これまで
みなさんに教えてくれていた田中先生は急病で長期休暇を取ることになりましたので、代打で私が担当することになりました。