翌日。あたしはヲタverseデビューをするために成実ちゃんを家に呼び、元システムエンジニアの機械ヲタな彼女に教わりながら基本情報を登録した。
「これでスマホからいつでもどこでもやれるっす」

本人確認を済ませ、架空のキャラクターを選択。
「わ、かわいい」

萌えキャラとかクールビューティとか、タイプ別に選べるのは嬉しい。着ぐるみまであるし、テーマパークのような開放感もあり、陰キャですらキャラを忘れてはっちゃけてしまいそうな異空間だ。

「顔写真の公開は、お互いの親密度が一定値を超えたら見られるんすよ」
「それまではこのキャラクターがあたしの分身ってわけね」

これは楽しい。

架空のキャラクターで1クッションおけるのはハードルも低めでさほど気負わなくていいし、何よりも普段より素直な感情が溢れてくるような気がした。

「ニックネームは【Kanon】、この黒髪ロングの眼鏡っ娘いいじゃん」
なるべく実物と差をつけたくない。実際に会った時にギャップ萎えされるのが怖いから。
「ファッションも選べるんすよ」
「へえ、着せ替えみたいで楽しい」

持ってる服でしか勝負できないリアルな世界とは違い、着たい服をある程度自由に選べて楽しめるなんて。しかも、課金無しである程度選べるのはありがたい。
ロリータもあればノーマル、フェミニン、メルヘン、ファンタジーなど様々なジャンルから探して着ることもできる。
「もっとハイレベルなのだと、課金になるっす」
「あ、なるほど」

恋ゲーもそうだ。
課金すればするほど意中の彼との親密度が上がる。
「でも、これはゲームとは違うっす。金かければハイスペ落とせると思ったら大間違いっすよ」
「う……」
鋭いな。