「奏音さん、どうかしたっすか?」

「成実ちゃん、あたし気づいた」

そうだ。あたしは……

「声がケヴィンの彼と、真正面から向き合ってみるよ」

「まだケヴィン持ち出している時点で真正面じゃないと思うっす。けど、まあいいんじゃないっすか?」


いた。

職業が「声優」って人。


〈こんにちは〉
〈こんにちは〉


何と、同時挨拶!

〈同じタイミングでしたね〉
彼からメッセージがきた。
〈そうですね、ちょっとびっくりしました〉
〈僕は七音(なおと)です。声優やってます〉
〈素敵なお仕事ですね。私はKanonです。シナリオライターやってます〉
〈シナリオライターですか。すごいですね。どんな脚本を書かれているんですか?〉

ここは、一か八かかけてみよう。


〈『最後の王子』っていう恋愛シミュレーションゲームの脚本を書いています。お恥ずかしながら、私は自分で書いたケヴィンというキャラクターがめちゃくちゃ好きすぎて。ケヴィンの声を担当してくださった方に出会ったら、まずありがとうございますって伝えたくて〉
〈あ、マニアック過ぎましたね。ご存知だったらいいかなぁなんて期待してしまいました。すみません〉

まだ直接会ったこともない人にここまでぶちまけるのは、やりすぎかな。

でも、遠慮してたら進展も何もない。

〈こんな偶然があるなんて、もはや奇跡ですね〉
と、今度は彼からのメッセージ。

〈偶然? 奇跡? 何のことですか? あ、もしかして、最後の王子知ってるんですか?〉


だったらいいな。

そうだったらいいのにな。


子どものようにあたしは口ずさむ。


〈知ってるも何も、〉


〈僕、ケヴィン役で出てましたから〉


え?

「え、ウソ!!」

まさか、そんなことが。



〈これも何かの縁ですね。もしよろしければ、今度お会いしませんか?〉



「!!」

「来たっすね。“最後の王子”が」

あたしの、運命の人。


ケヴィン。

あなたが繋いでくれたこの縁を。


あたし、今度こそ掴みたい。


〈はい、是非〉