「ねえ、この『ケヴィンのコスプレが趣味』って人」
「随分マニアックっすね」
「めっちゃ気になる」
「話しかけてみたらどうすか?」
そうだ、あたしから行くのもありじゃん。

ここは思い切って行くか。

〈こんにちは〉
Kanon、頑張れ。
〈こんにちは〉
〈初めまして、Kanonです〉
〈僕はレイです。よろしく〉
〈あの、ケヴィンのコスプレってまさか『最後の王子』の、ですか?〉
〈そうです。ご存知なんですね! 初めてお会いしました。光栄です〉
き、

き、

きたきたきた!


〈こちらこそ! 実は私、めちゃくちゃ好きなんです〉
〈そうでしたか。それは僕も嬉しいです。かっこいいですよね、彼〉
〈はい、はいそれはもう!〉
〈僕は彼にはなれないですが、少しでも近い存在になれたらいいなと思って。まあ、憧れて真似事をしているだけなんですけどね〉
〈それでも素敵です。衣装とかは自分で作ったりするんですか?〉
〈はい、僕は服飾の専門学校通っていたので得意です。今はファッションデザイナーとして事務所に所属しています〉
〈すごいです!もし差し支えなければ、見せてもらってもいいですか?〉
〈いいですよ。写真見られるようにしますね〉


はうあ!

「奏音さん?」
「あ、あ、コスプレ。ケヴィンの、コスプレ」

ハートマーク来た!

写真はというと……。


すごい。


すごすぎる。


〈クオリティ高すぎて鼻血出そうです! めっちゃ神ですね!〉

〈ありがとうございます。喜んでいただけたところ大変恐縮なんですが、一番肝心なことを言わなければいけません〉

〈え、何ですか? 肝心なことと言いますと?〉

〈僕、女です〉

「はあ!?」