「ちょ、ちょっと……それはさすがに」
「次行くっす」
「え、何で!?」
「時間の無駄っす」
「ええ?」

まだウサぴょんの返信はない。


〈すみません、お話してもいいでしょうか?〉
「あ、誰か来た」
Kanonの近くにエプロンをした男性が近づいてきた。
〈はい、大丈夫です〉
〈ありがとうございます。僕は【たけちゃん】っていいます。パティシエをしています〉
〈パティシエですか。素敵なお仕事ですね〉
たけちゃんと名乗るパティシエの男性は、とても饒舌な人のようだった。
〈スイーツバイキングが大好きでよく行くんです。女子かって突っ込まれること多いんですけど、女子も男子も関係ないですよね〉
〈そうですね。ちなみに何が一番好きですか?〉
〈パンケーキです。メイプル風味のやつが一番。神ですよ、あれは〉

メイプル風味の、パンケーキ。

「あ……」

〈ちなみに、嫌いな食べ物って聞いてもいいですか?〉
〈僕の嫌いな食べ物……辛いものは苦手ですね。基本甘いのばかりなんで〉

来た。

来たよ、これ。

「またケヴィンっすか?」
「うるさいな」
「図星っすね」
「もう、いいじゃん」
何か、この人良さげな感じ。

「あ、何? これ」
ハートマークが出てきた。

「気に入られましたね。親密度がアップしたんで、相手の顔写真見れますよ」
「え、相手の顔が見られるってことは」

あたしの顔も、見られるじゃん!

「ちょっと、私まだ見せたくないんだけど……」
「通知が来るからNOを選択すればいいっす。でも、相手は顔出し許可してるっすね」
「やりにくいなあ……」

あまり気が進まないけど、まあ出してみるか。
「え?」

相手の写真。

想像とかなり違う。

「ど、どういうこと?」

プロフの体重は52キロだけど、どう見ても70キロはありそう。

「身長166センチ、体重52キロ。本当に?」

成実ちゃんにも見せてみた。

「ああ〜。こいつは体重詐称してますね」
「や、やっぱり?」
「あるあるっすよ。よくよく考えたら、これだけ甘い誘惑が四六時中飛び交う中でこのプロフの体型キープできる方が奇跡っす」
「だよね」
「こいつは近々糖尿病になるっす。てかなってると思うっす」
「うう……」

〈Kanonさんの顔も見てみたいです。許可してもらえませんか?〉
〈僕は見せました。僕だけ見せるのは不公平だと思うので、ここは公平にいきませんか?〉

「え? 何なの、この人」
自分は見せました、だからお前も見せろって。勝手に見せてきといて、何言ってるの?

「うわあ、多分こいつ手当たり次第顔写真見せろって言ってくるやつっすね。キモイっす」
げ、めっちゃ嫌なやつやん。
「顔写真の公開を強制してくるってに悪質だよね」
「無視でいいっす。何なら運営に報告するっす」
ああもう、どいつもこいつも。

ケヴィンのフリした外道共め。

「ケヴィンのイメージが……」
「だから、ケヴィンじゃないっす」

残るは3人。誰から行こうか。