〈もう離さない。これからはずっと、君のそばにいるよ〉
やや低めの、甘美な声があたしを包む。

ああ、何て心地良い響き。

奏音(かのん)、ずっと愛してる〉
《ケヴィン……》

今にも溶けだしてしまいそうなほど。

《あたしも、愛してるわ。ケヴィン》

〈結婚しよう……〉

嬉しい。


《はい……》

どんな困難も、彼とならきっと乗り越えていける。

〈必ず、幸せにするから〉

あたしたちは、情熱的に唇を重ねる。
波打つシーツの上で――――


ブーー
ブーー
ブーー
ブーー
ブーー
ブーー


ブ――――ブ――――ブ――――ブ――――

「!!」

突如、スマホの画面が切り替わり【母】と表示される。

「は!?」


あたしの愛しのケヴィン……。

彼との至福の時が、あっさり妨害された瞬間だった。


「ッ……!」

物語はいよいよ終盤に。
甘いセリフの後、自動で表示される彼のボイス付き限定スチル。

スーパーハッピーエンド――これを見るために一体いくら課金したと思ってやがるんだ。

「お……の、れ……」

思わずスマホを床にずり落としてしまう。

震える指先からは、母への激しい殺意が。


「く、く、くくくくく……クソババア―――!!!!」