蒼は無事にその子に大絶賛されて、喜んでいたようだけど。 ちなみに私の自由研究は卵の白身と黄身を入れ替える実験で、失敗に終わった。
……あの時、どんな虫を取ったかなんてやっぱり覚えてない。
浮かんでくるのは、どうしても蒼の顔ばかり。
「おい、宮下」
「ヒッ」
不意に頭上から名前を呼ばれて勢いよく頭を起こすと、何故か垣根が前の席に座っている。
「はっ?」
「何やってんの」
私は状況が理解できずにいるのに、そんなことお構いなしみたいな顔で垣根は今まで私の頭で隠れていた日誌に視線を落とす。
「今日、日直?」
「違うけど……。 いや、なんでここにいるの」
「え、じゃあなんで日誌書いてんの」
「それは田中が早退したから……、じゃなくてさ」
なんで垣根は私の質問に一切答えようとしないのか。
「なんでいるのって聞いてるの」
「別に。 日誌、見せて」
垣根はそう言って、勝手に日誌を手に取る。