お昼の心配はせずに済みそうだけれど、朝の間に何だか疲れてしまった。 けれど、この登校時間は無駄に出来ない。

また蒼と何気ない会話をしながら学校に到着して、今日は昨日のように課題が無いのが救いだと思いながら教室に入ると、田中が待ってましたと言わんばかりに飛びついてきた。

「宮下! これまじ!?」

「な、なにが」

「これ! 小学生のとき捕まえたレア昆虫ランキング!」

「え゛っ」

田中は昨日の日誌のページを私と蒼に見えるように開く。 同時に、私は嫌な汗がじんわりと額に滲む。

「ミヤマクワガタ、ゲンゴロウ、ミズカマキリ……これ、レアなの?」

蒼が聞くと、田中は「やべえレア」と興奮気味に言う。

「ミヤクワガタなんて、全男子小学生の夢だろ。 宮下、まじで捕まえたことあんの?」

「そ、それは……」

「俺はあるよ」

ふいに後ろから声が聞こえて振り向くと、そこには垣根が立っていた。 私は驚きのあまり声も出ないでいると、一瞬だけ垣根と目が合った。

「えっ! カッキーあんの!?」

「ゲンゴロウもある」

「マジかよ。 俺、カッキーのこと初めて尊敬したわ」

「初めてかよ」

垣根が田中の肩を拳で軽く突くと、田中はお得意のオーバーリアクションで痛がって見せる。 その馬鹿でかい声に私はハッとして隣にいる蒼を見ると、蒼は垣根と田中のやり取りをニコニコしながら眺めていた。