連休明けに検査だって言ってたから、もうそろそろだと思うけど。
「お母さん、下の売店に田中さんとこのサクランボ売ってたよ? 買ってこようかと思うけど、食べられる?」
「うん? そうね。明日からいくつか検査を受けないといけないから、夜9時以降はお水も食べ物もだめって言われたけど、時間的にまだ大丈夫ね。食べようかな」
「よかった。じゃ、買ってくる。三条くん、ちょっとここで待ってて?」
 さっき売店で見つけた、二丁目の田中さんが作ってるサクランボ。
 とってもキレイで美味しそうだったんでお母さんに買ってあげようと思ったら、三条くんから「検査前は食べられないこともあるから、ちゃんと確認してからのほうがいい」って言われた。
 そういうとこ、やっぱお兄さんって感じ。
 三条くんはたぶん、あたしなんかよりずっと大人なんだろうと思う。
 きっと、小さいときに芸能関係のお仕事してたとき、大人に混じってずっと気を遣ってただろうから。
「おい、ちょっと待て」
 病室を出ようとしたところで、三条くんから呼び止められた。
 あ、ちょっと怖い顔。
「な、なに?」
「俺が買ってくる。お前はお母さんと話をしてろ」
「え? でもっ」
「限られた面会時間だ。少しでも一緒に居て話せ」
「えーっと」
 それはそうだけど、三条くんはお客さまだし、お遣いに行ってもらうなんてできないよぅ。
 思わず固まる。
 すると、三条くんがあたしの肩にそっと手を置いて、ベッドのほうへ押しながらドアの取っ手に手を掛けた。
「ほら、ちょっとそこどけ」
 あのう、なにをそんなに怒っていらっしゃるのでしょうか。
「三条さん? いいの。日向に行かせて」
 お母さんの声。