「いや、イチゴ。ほんとにけっこういるんだぞ? ただ、みんな眼鏡掛けてるけどな」
 チーン。
 とうとう、晃もゲラゲラ笑いだした。
「くははっ、聖弥さん、傑作だ」
「でもなぁ、晃。実は俺もそいつらに同感なんだよ。ちなみに俺はコンタクトだけどな」
 えっ?
「へぇー、聖弥さん、変わってるなぁ。よかったな、姉ちゃん。聖弥さんも姉ちゃんが可愛いってさ」
「もうっ、ふたりしてからかわないでよっ!」
 三条くんが笑っている。
 晃もおなかを押さえて笑っている。
 陽介と光輝も、意味なんて分かってないくせに、一緒になってゲラゲラ笑っている。
 久しぶり。
 夕ご飯のときにみんながこんなに笑ったの、ほんと、いつぶりだろう。
 ちょっと嬉しい。
 まぁ、今日、三条くんを誘ってよかったかな。
 弟たちの、こんなに楽しそうな顔を久々に見られたし。
「んんっ……。三条くん、おかわりは?」
「あはは。あ、すまない。頼む」
 ううう、なんだかめっちゃ恥ずかしい。
 冗談だって分かってるのに、可愛いなんて言われ慣れてないから。
 真っ赤になった顔を片手で押さえながら、三条くんのお皿を受け取る。
 そして、頬から離した手をテーブルに置いて立ち上がろうとした、そのとき。
 突然鳴った、スマホ。
 居間と台所の境、バッグを投げ置いたすぐそばに転がっているあたしのスマホが、けたたましい着信音を響かせた。
 お母さんかな。
 チラッと、壁の時計を見た。
 もう、帰ってきて一時間半以上経っている。
 とうにお母さんも帰って来てないとおかしい時間なのに。
「あ、電話。三条くん、おかわり、ちょっと待ってね」