「陽介っ、光輝っ、ほら、晃お兄ちゃんがお手伝いしてくれてるよっ? 偉いよね」
「あっ、ごめんなさいっ」
「あとであにめのひいてっ」
 うんうん。
 ふたりともいい子。
 なぜか、三条くんはきょとんとしてあたしの顔を見ている。
 なによ。
 ちっちゃくても、ちゃんとお姉ちゃんなんだから。
 元気いっぱいの陽介と光輝が唐揚げの大皿を運んで、まだ真面目な顔をしている晃がスプーンとお箸を並べてくれた。
 三条くんは、夕ご飯はいつもお母さんとふたりきりだったって言ってた。
 お父さんはいつも仕事で遅くて、一緒にご飯を食べたことがあまりないって。
「いただきまーす」
 メニューは、宝満農園特製の野菜カレー。それと、特売品だった鶏モモ肉のゴロゴロ唐揚げ。サラダも作った。
「みんな、いっぱいおかわりしてね」
 三条くんが、あたしが作ったカレーと唐揚げを食べてくれている。
 よく見ると、彼は少しお箸の持ち方が個性的。先っぽのほうがクロスしちゃって、挟んでつまむのが苦手みたい。ちょっと可愛い。
 味はどうだろう?
 実を言うと、お料理は小学生のときからやってるけど、味付けにはあまり自信がない。
 弟たちはみんな、なにを作っても絶対「美味しい」って言ってくれるから、正直な意見を聞かせてくれる人が居なくて。
 どうかな。
 三条くんの口に合う味かな。
 いやいやいや、なにを考えているんだ、あたしは。
 三条くんがすっとあたしのほうを見た。
 ちょっとびっくりしたような顔。
「旨い。お前、料理上手なんだな」
「そっ、そう? よかった」
 えっ? 美味しいっ? 
 やったぁ! 嬉しいっ! えへへっ!
 うわっ、えへへっじゃないっ。