そういえば我が一年三組は、隣の四組と合同だ。
 四組は三条くんのクラス……。
 小夜ちゃんの話では、三条くんも音楽選択らしい。
 うわぁ……、なんか気まずい。
   
「音楽担当の高橋です。男の先生で驚いたかな。さぁ、今日はみんな三人ひと組で前に立って、ひとりずつ自己紹介したあと、三人で校歌を歌ってもらいます」
 ええーっ! っと、どよめく音楽室。
 そんなの聞いてない。
 確かに、入学式のあとのホームルームで、動画サイトの校歌のQRコードが配られて、みんな最初の音楽の授業までに覚えてくるようにって言われたけど……。
 音楽室、けっこう広いな。
 中学校の音楽室は床が平らだったけど、ここはお雛さまみたいに段々になってる。
 あたしはけっこう後ろのほう。
 見回すと、右前のほうに、見覚えのある広い背中が見えた。
 三条くん……。
 うわぁ、今朝、あの背中におんぶされたんだ。
 はっ……、恥ずかしい……。
 思わず、真新しい音楽の教科書でパタパタと顔をあおぐ。
 三条くんは同じ四組の女の子に挟まれて座って、ちょっと居心地悪そう。
 左の前のほうを見下ろすと、その姿をじとーっと眺めている彼女が居た。
 小夜ちゃん、残念だったね。席が指定されてて。
「さ、みんな静かに。自己紹介ではみんな、なにかひとつ将来の夢を話してくださいね」
 さらにどよめき。
 うわ、またひとつハードルが上がった。
 あたし、みんなの前で話せる夢なんてないよぅ。
 翔太なら『夢はプロ野球選手』って、小学生みたいな夢を即答するだろうけど。
 案の定、翔太は美術選択。
 実は翔太、すっごい音痴なの。