なんでなんでなんでっ?
 どうしてここに三条くんが居るの?
「こっ、こら、あっち行けっ!」
 バサバサと羽を広げてベッドから飛び降りるベートーベン。
 そのベッドの上で壁に背をつけて、身をよじっているパジャマ姿の三条くん。
 そしてその三条くんに飛び乗って、しがみついているあたし。
 頭の中がごちゃごちゃ。
 目が覚めたら、小屋に居るはずのニワトリたちが庭を歩き回っていて……、居なくなったベートーベンを捜していたらこの部屋にたどりついて……、そしたら三条くんが居て……、えーっと。
「おい、いつまでそうしてるつもりだ」
「へ?」
「へ? じゃない。早く降りろ」
 ハッと我に返る。
 うわぁぁ! あたしっ、なにしてるのっ?
「ごごごっ、ごめんなさいっ!」
 あわわと彼の胸を掴んでいた両手を離して、思わずのけ反る。
 ありゃ、後ろは手をつくところがないっ。
「こらっ、危ない!」
 突然、ぎゅんと近くなる彼の顔。
 頼りなく傾きかけた背中が、ギュッとなにかに支えられた。
 反動でふわりとなった髪が彼の顔に掛かる。
 えっ?
 うわぁぁ、三条くんの手が背中にっ!
「ごごごっ、ごめんなさいっ!」
「ごめんはもういい。気をつけて降りろ」
「は、はいっ」
 今度はゆっくり体をよじって、彼に背中を向けてベッドの下に足を伸ばす。
 あ、ベートーベンが台所のほうに……。
 痛いっ!
 えっ? 
 足に力が入らないっ。
「おい、お前、ケガしてるぞ」
 ベッドの縁に腰掛けたあたしを後ろから覗き込んで、三条くんがちょっと大きな声を出した。
 お日さまが本気を出し始めて、もうずいぶん明るくなった部屋。