そう言って一歩踏み出した晃がビニール袋をスッと差し出すと、すぐに陽介と光輝がササッと晃の両側に付いた。
「姉ちゃんっ、これは俺たちからのプレゼントだっ!」
「ぷれぜんとだっ!」
「ぷれじぇんとだっ!」
 えっ?
 プレゼント?
 ゆらゆらと揺れているビニール袋の中には、なにか円筒形のものが透けて見えている。
 ゆっくりとそれを受け取って、そっとその中を覗いた。
「あ……」
 すると、そこにあったのは、白いプラスチック鉢に植わった、ちっちゃなイチゴの株。
 ハッとした。
「えっと……、晃、これ、イチゴ?」
「おうっ! でも、ただのイチゴじゃないっ!」
 すぐに聖弥くんを見上げた。
 聖弥くんが、とっても優しい瞳であたしを見下ろす。
「日向、分からないか? あのガラス混じりの土の中から、みんなで助け出したんだぞ?」
 弟たちが声を張り上げる。
「お父さんのイチゴだっ! みんなで助け出した、本物だ!」
「ほんものだっ」
「ほんもにょだっ」
 てっきり、あの嵐の夜にぜんぶダメになってしまったって思っていたのに。
 思わず、袋ごとその鉢をグッと抱き寄せた。
 嬉しい……。
「姉ちゃんが毎日、歌を聴かせて可愛がったイチゴだ。そう簡単に死んじまわないぜ。この株を増やして、また姉ちゃんの歌を毎日聴かせてやってくれ」
「やってくれ」
「やってきゅれ」  
 晃……、陽介……、光輝……、本当にありがとう。
 そうお礼を言おうとした瞬間、今度は突然、聖弥くんがピョンとステージから飛び下りた。
 弟たちの前に立って、それからゆっくりと振り返る。
 え? なに?
「次は俺からだ。あのときのお返し」
 あたしを見上げる聖弥くん。