『あの、聖弥くんが使っていた部屋、実はノブちゃんの部屋だったんだよ。彼女、あそこから毎日、宝満養鶏場の庭を眺めていたんだ』
『いや、俺、高校入る前まで、ほとんど毎日、宝満家へ遊びに来てたからな。だから知ってるんだ』
『俺が日向ちゃんのお母さんと縁側でスイカ食ってたり、庭でキャッチボールしてたりすると、すごく恨めしそうに見下ろしててな』
『まぁ、もしかしたら、ちょっと寂しかったのかもしれんな』
そうだったんだ……。
聖弥くんのお母さん、もしかしたらあたしと同じように、自分のことがすごく嫌いだったのかもしれない。
農家で育った自分の過去を消して、家も納屋も街ごと消して、新しい自分になりたかったのかもしれない。
それにしても、翔太のお父さん、毎日、お母さんに会いに来てたんだね。
縁側でスイカ食べたり、庭でキャッチボールしたり。
もしかしたら、お母さんのこと好きだったのかな。
でも、お母さんがお父さんと出会って、お父さんが養鶏場を継いでからも、翔太のお父さんはずっとお母さんのいいお友だちで居てくれたんだ。
なんか、とっても素敵。
あ、ひょっとして、翔太もあたしのこと……、いや、ないな。
もう完全に小夜ちゃんと付き合ってる感じだし。
「どう? おいしい?」
「うん。イチジクなんて久しぶりに食べたわ。すごく甘くて美味しいね」
「よかった。田中さん、それ聞いたら喜ぶね」
「そういえば、今日は、三条さんは?」
「聖弥くん? もうすぐ来るよ」
病室の窓の下、さっきから小さく聞こえている、ガタゴトという音。
今日は、お母さんの夢をちょっとだけ叶えるんだって、聖弥くんがいろいろ張り切ってくれてて。
『いや、俺、高校入る前まで、ほとんど毎日、宝満家へ遊びに来てたからな。だから知ってるんだ』
『俺が日向ちゃんのお母さんと縁側でスイカ食ってたり、庭でキャッチボールしてたりすると、すごく恨めしそうに見下ろしててな』
『まぁ、もしかしたら、ちょっと寂しかったのかもしれんな』
そうだったんだ……。
聖弥くんのお母さん、もしかしたらあたしと同じように、自分のことがすごく嫌いだったのかもしれない。
農家で育った自分の過去を消して、家も納屋も街ごと消して、新しい自分になりたかったのかもしれない。
それにしても、翔太のお父さん、毎日、お母さんに会いに来てたんだね。
縁側でスイカ食べたり、庭でキャッチボールしたり。
もしかしたら、お母さんのこと好きだったのかな。
でも、お母さんがお父さんと出会って、お父さんが養鶏場を継いでからも、翔太のお父さんはずっとお母さんのいいお友だちで居てくれたんだ。
なんか、とっても素敵。
あ、ひょっとして、翔太もあたしのこと……、いや、ないな。
もう完全に小夜ちゃんと付き合ってる感じだし。
「どう? おいしい?」
「うん。イチジクなんて久しぶりに食べたわ。すごく甘くて美味しいね」
「よかった。田中さん、それ聞いたら喜ぶね」
「そういえば、今日は、三条さんは?」
「聖弥くん? もうすぐ来るよ」
病室の窓の下、さっきから小さく聞こえている、ガタゴトという音。
今日は、お母さんの夢をちょっとだけ叶えるんだって、聖弥くんがいろいろ張り切ってくれてて。