「は? それってプロポーズでしょ」
「え? そうでしょうか」
 いやー、やっぱりそう聞こえますよね?
 お昼休み、突然、保健室に呼ばれた。
 水城先生が、なにかあたしに頼みがあるんだって。
 あれから二週間。
 もうそろそろ五月も終わり。
 校庭の木の緑がとってもキレイ。
 目がくるくるなるほど忙しかったイチゴの旬も、翔太親子と三条くんのお手伝いのおかげで、なんとか乗り切ることができた。
 夏の間は野菜系の出荷と、冷凍ストックのイチゴで作ったジャムをスーパーに出すくらい。
 冷凍イチゴのジャムは、ちょっと味が落ちるけどね。
 でも、この時期にたくさん入って来る外国産イチゴでは作りたくないし。
 だから、うちのイチゴは、夏の間は冬に向けた子苗作りだけ。
 毎日やることはいっぱいあるけど、イチゴの旬に比べたらずいぶんゆっくりできる。
 三条くんは「お母さんが元気になるまで手伝ってやる」って言ってくれたけど、これは丁重に丁重にお断りした。
 来月にはオーディションを控えているって言ってたし、その邪魔にはなりたくない。
 実は、先週がお父さんの一周忌だった。
 でも、お母さんは入院しているし、イチゴの旬もクライマックスだったから、お坊さんにとりあえずお経だけ上げてもらって、ちゃんとした会はお母さんが元気になるまで延期することにした。
 お母さんの検査は、まだ途中。
 翔太のお父さんが、いろいろお医者さんから聞いてるみたいだけど、まだあたしは詳しいことは教えてもらえてない。
「宝満さんっ? ちょっとっ、聞いてるのっ?」
「へ?」