「――で? そこで今度は思いきり顔をひっぱたいたってのか」
「だってぇ、パンツ見せろとかありえんもん。だいたい、翔太が変なこと言うからでしょっ? 責任とってよねっ!」
「せ、責任っ? 日向を嫁にもらえってのかっ?」
「ちっがーうっ!」 
 放課後になって、やっと翔太と話ができた。
 今日はこのあと新入生への部活動紹介があるらしく、まだけっこうみんな教室に残っている。
 でも、あたしには関係ない。
 高校では部活はしないって決めてるから。
「もうっ、翔太がちゃんと三条くんに話してよっ! イチゴ柄パンツの話はウソだってっ。あんなこと翔太が言わなかったら、三条くんをひっぱたくことだってなかったんだからっ」
 空いている翔太の前の席に後ろ向きに座って、じろりと翔太を睨みつけた。
 あさってを向いて、ちょっと唇を尖らせる翔太。
「はぁ? いや、バッグを投げつけた件は確かに半分は俺も悪りぃかもだけど、ビンタしたのは俺は関係なくねぇか? それにあのときは、別の中学から来たやつがお前のこと紹介してくれっていうから、俺は善意でだな――」
「あーら、またジャガイモがジャム子とイチャついてるわ」
 翔太の言葉に重なって突然聞こえたのは、聞き覚えのある甘ぁーい甘いアニメ声。
 うわ、久しぶり。この感覚。
 あたしと向かい合った翔太の向こう、そこにぬっと顔を出したのは、あたしが一番苦手な彼女。
「あんたたちねぇ、こんな目立つとこでイチャつかないで、ふたりの時間はイチゴのビニールハウスの中とかにしなさいよ」
「あ、()()ちゃん。もう帰るの?」
「ううん。部活動紹介を見に行くの。ジャム子はもう合唱やらないの?」