午前5時50分。

 僕は昨日舞花に言った時間より少し早めに到着した。

 だけど、舞花はもうそこにいた。

 ベンチに座って目を閉じて、もうすでに起きだしている太陽の光を浴びていた。
 
 僕が来たことに気づくと、顔をパッと明るくして立ち上がった。


「おはよう」


 静かな空気の中に、その小さな声はよく響いた。

 今日の舞花は半袖の白いTシャツに、丈が短めのベージュのオーバーオールを着ていた。

 足元はピンクのラインの入ったスニーカーを履いている。

 髪は上の方でポニーテールをしている。

 まぶしすぎるその姿に、僕は荷物を置くふりをして「おはよ」と不愛想に返しながら視線を誤魔化した。


「まだ6時前だよ」

「柏原君だって、6時前に来てるじゃん」


 正直眠れなかったし、いつもより早く目が覚めた。

 だから早く来たわけじゃない。

 舞花に、早く会いたかったんだ。