この病気を発症してしまえば、2〜10年の間で死んでしまう。大好きなコウセイに、その病気を伝染すわけにはいかない…。



風俗で働いていてずっと眠れなかった私は睡眠薬を飲んでいた。その薬を、全部取り出して、シャワールームの中で全て口にした。1錠も残さず。


コウセイにバレないように。


意識があるうちに、コウセイが使っているのであらうカミソリで手首も切ろうとしたけど。伝染してはいけないから、手首は切れなかった。


眠りにつくまで、湯船に体をおさめた。ゆっくりと体が、お湯に沈んでいく。


そこから私の記憶が無い。


いつ来たか分からないコウセイが何か怒鳴ってるけど、口に指を突っ込まれた気もする…。


「マユ……」


だけど、その指は抜かれていく…。

ものすごく脳が揺れて、
胃が気持ち悪くて目も開けられない。



「このまま楽にした方が、…お前は幸せなのか…」


うん、幸せだよ私は…。


「…死ぬなよ……」


私の頬に、冷たい雫が落ちてきたのは分かった。だけどそれが涙だとは今の私には分からない。


「マユ…」



だって私は大好きな人の腕の中で、死を受け入れることができるんだから…。




──…ほら、私の顔、笑ってるでしょ?