僕が赴任してまだ一年経たない学園は、山の上に聳え立つ。

封鎖的で、古臭い風習がある。

まずは、その土地を治めていた華族が理事長で、その学園に通っているのはその華族一族や、分家、士族。
未だに、土地の人々は頭が上がらないのかその存在は、圧倒的だった。


桜が生い茂る坂道を登り、大きな時計台がある第二校舎が、僕の教室。
産休の臨時に入った、ただのしがない音楽教師だ。

音楽は選択なので、そう多くの生徒には関わらない。
空き時間は専らピアノを弾いていられる。
最新のセキュリティがある校舎と違い、第二校舎は時代が止まったように静かで、寂しく、気に入っていた。


僕は、自分1人の時間に酔いしれるこの空間が好きで、邪魔されたくなかった。
けれど、僕も臨時教師。権力には叶わない。





「先生、ぼーっとしてどうなさったの?」