いた!魔物が、王座に座ったまま、眠り込んでいる。

その周りは、集落から強奪してきたらしい金銀の宝物に囲まれている。

俺は、忍び足で王座に近づく。

「カラン」

しまった!宝物をひっかけて音を出してしまった。

「はっ、何者だ」

魔物が起きてしまい、暗闇に目をこらす。

「名もなき者だ。仲間を殺した礼にきた。覚悟しろ」
「なんだと!」

魔物は空中に刀を振り回すばかりで、俺にかすりもしない。明かりがないと何も見えないのだ。

ブン、シュッと音を立てて舞う剣筋のすきを突いて、魔物の首に噛み付く。

「うぐ!」

魔物が体をねじらせ俺に腕をかけ、はずそうとするも、俺は体全体を硬直させ、噛み続ける。

これは致命傷だ。絶対放すもんか。

血が喉からどんどん吹き出てきて、魔物を弱らせていく。魔物は口から血を吐きながら、とうとう床に倒れこんだ。

「ぐっ……。我をしとめるとは。たいしたものだ、そなた、十二支の竜だな。殺されると竜になって復活し、敵を倒すためにやってくるという……。我、伝説の英雄に仕留められるなら、本望だ」