なんてことだ。俺が日中眠りこけている間に、そんなことが起こっていたとは。

 住みかから出ると、確かに血の臭いがする。仲間の血か。くそっ、なんてこった。

 魔物か……。

俺は苦い思い出を想い起こす。

 俺が子供のころ。

仲のいい両親に育てられ、俺は巣立ちの時を迎えようとしていた。
そんな時だ。山の向こうから魔物が現れたのは。

二本足で立ち、背中に矢を背負っている。火矢を射掛け、あっという間に集落は火だるまになった。親たちは殺され、俺も、ほうほうのていで逃げ延びた。

俺は、必死で生きた。昼に出歩くと魔物に見つかってしまうので、その時以来、夜に行動するようになったのだ。

逃げ延びた先は、ここ、武蔵野国。
いろんな仲間が傷をおった俺を癒やし、食料を持ってきてくれた。

元気になった俺は木々の間を飛ぶように走り、襲われても瞬時が体が反応するよう、食らいつく鍛錬を積んだんだ。

ここは、俺にとって救いの国。そんな国が攻められた。またしても魔物によって。