と、いうのもこの世界の貴族には、十三歳の成人の儀式のときに【神託スキル】というものが与えられる。

 帝都の大聖堂で大司教様……というか神様から【領地の農作物の加護】や【軍団指揮系】のスキルを貰えるらしい。

 例えば僕が授かる可能性が高いのは、領地運営系だとこの二つだ。

【豊穣小神セネーの微笑み】

【風と大地の恵み】

 この二つは農作物の成長速度が一・一倍になるというスキルで、両方合わせると一・二一倍になるということ。

 まあ、両方授かるのは中々ないけれど、間違いなくどちらかは貰える感じらしい。

 そして軍団指揮系のスキルで言うと――

【巨人の血脈】

【龍の加護】

 この二つは、指揮する軍勢のHPがそれぞれ一・二倍になるものだ。

 数千人とか数万人規模での強化になっちゃうので、合わせて一・四四倍という補正倍率がどれほど強烈な効果なのか……それは推して知るべしというところだろう。

 ちなみに僕の家は軍人の家系で、国家の守護盾と呼ばれている由緒ある家系らしい。

 なので、この二つを長男が授かるのはほとんど確定という話だ。

 っていうか、そういう家系だから伯爵家となっている。

 そして稀に長男が貰えるのが、更にHPが一・五倍となる【神龍の加護】というものらしい。

 これを全部合わせるとHPが二・一六倍とかいう……バカみたいなことになるので、僕としてはここは絶対に貰いたくない。

 だって、そんなスキルを貰っちゃったら間違いなく国家間の戦力バランスが崩れちゃう。

 そうなると、こっちが加害者の侵略戦争とかが起きかねないレベルだからね。

「ともかく、一週間後には僕も成人だ」

 とはいえ半人前以下の子供だし、税金関係にいきなり口を出すことはできないだろう。

 けれど、農村の技術開発程度になら、少しは口を出せるようになるはずだ。

 まずは農耕機械の革命に、テンサイからの砂糖精製。

 他にも貝殻を砕いて作った炭酸カルシウムでの肥料革命。

 やりたいことは山ほどある。

 ――まずは僕の国から餓死者を減らす!

 そうして僕は意気揚々と、十三歳のスキル神託の儀式へと臨むことになった。


 ★☆★☆★☆★☆★


 ってことで、神託の日になった。

 この世界での成人年齢――つまりは十三歳になった僕は王都の神聖教会大聖堂に立っていた。