追放された転生貴族、外れスキルで内政無双

 ええと、つまり……。

 実はマリソンが長男でした!

 と、そんな感じにするために、そういう無茶な理論づけを行ったという解釈で良いんだろうか?

「まあ、支援はするので、そこは心配するな。当家には最初から数に入れられていないような……そんな半ば忘れられた領地があるのは知っているな?」

「魔境の……大森林のことですか?」

 確かそこは魔物がひしめく大森林のはずだ。

 農業も商業もいかなる産業も成り立たない、不毛の地という風に聞いている。

 と、僕の問いかけにコクリと父上は頷き、そして吐き捨てるように呟いた。

「貴様は当家の養子という形にしてやる。その地を任せるので、マリソンの義理の兄弟の名に恥じぬように励むが良い」

「お兄様……いや、ヒロ君? 君みたいな面倒な存在に、本家の近くをウロチョロされたら厄介だから、辺境に引っ込んで出てくるなと……そういうオーダーだと思ってくれれば間違いないよ」

 そう言い放った二人の瞳は、大聖堂の時の父上と同じく――

 ――まるで生ゴミを見るかのような目だった


 サイド:オリバー=ローズウェル(飯島弘(ヒロ)の異世界での父親)


 私の名前はオリバー=ローズウェル。

 ――日本での名前を星川(たかし)という
 
 私は星川工業という会社を運営していたのだが、リストラした社員に逆恨みされて後ろから刺された。

 そして、この異世界の地に降り立ったのだ。

 ちなみに「異世界モノ」とかいう小説が、部下の間で流行っていることは私も知っていた。

 興味を持って何作か読んだことはあるが……それはそれはとんでもないゴミの山だった。

 だが、社長たるもの他業種のゴミジャンルでも流行りには敏感である必要がある。

 そう思い、我慢して数作品は読んでいたのだが……驚いたことにその経験がこの世界で活きたのだ。

 少なくとも、この地に来た瞬間に、私の身に何が起きているのかをすぐに理解できる程度にはな。

 結論から言うと、私の身に起きた現象は異世界憑依と呼ばれる現象らしい。

 それは、(ちまた)で噂の異世界転生と呼ばれているモノとは若干違うものだ。

 つまりは、雷に打たれて事故死した三十五歳のオリバー=ローズウェルの記憶をそのままに、私は彼の体を乗っ取ることに成功したのだ。