追放された転生貴族、外れスキルで内政無双

「なら、問題は無しということで――さあ、当家の長男の優秀さを陛下にご報告せねばならんっ! ついでに守護剣のマクスウェル家にも手紙を送っておけ! ふはは! 奴の吠え面を想像するだけで今夜の酒は極上になるわい! そしてマリソンよ! もう一度言うが――でかしたっ!」

 父上はマリソンの背中をバンバンと叩きながら、肩を組んで大聖堂の出入口へと向かっていく。

 そして、警護の騎士さんたちやお付きの面々もそれに追従して――

「あ、あの……父上?」

 僕一人、その場で置き去りにされそうになったので、慌てて父上を呼び止める。

 すると、父上はぞっとするような冷たい視線を向けてきた。

 それはおよそ、親族に見せるような表情ではなく……まるで敵……いや、腐った生ゴミを見るような……。

「ヒロよ。貴様を次期当主と認めるわけにはいかなくなった。それは分かるな?」

「……はい」

「今は私はマリソンの祝いの席のことだけを考えたいのだ。貴様のその辛気臭い顔は……祝いの席に水を差すのでな」

 それだけ言うと父上たちは僕を残してその場を立ち去ったのだった。



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 それから一週間後――。

 呼び出しを受け、僕は父上の執務室に向かった。

 中に入るとそこには父上と、弟のマリソンが座っていたのだ。

 そして、弟が座っている席は父上の横だった。

 そこは少し前までの僕が……父上と同座するときの定位置だった場所だ。

「ヒロよ、お前はこの家の子供ではない。そういう結論になった」

「……え? 父上? ちょっと……何をおっしゃっているのか……」

 僕の問いかけに、父上ではなくマリソンが口を開いた。

「お兄様……いや、ヒロ君。君は何かの間違いで産婆に取り違えられて、運命の悪戯(いたずら)によって当家の子供として育てられてしまったんだ。つまりは、そういうことだよ」

「……マリソン? 僕を……お兄様じゃなく……ヒロ君って……?」

「この際だから言うけどね、貴族の家では次男と長男では扱いに天地の差がある。昔から……ただ長男というだけでチヤホヤされていた君が、僕は気に食わなかったんだよ」

 と、そこで父上がフンッと鼻を鳴らした。

「産婆がやったこととはいえ、平民の子を取り違えて気づかぬままに育て続けた当家にも責任
はある。それにこのまま貴様を市井の民に戻すようなことをすれば世間体も悪いしな……」