追放された転生貴族、外れスキルで内政無双

 僕と父上は驚きのあまりに同時に大口を開いた。

 スキル【運命をつむぐ勝利の剣】といえば、守護剣の家系の開祖様だけが使えたという伝説のチートスキルじゃないか!

「ちなみに今回のアズガルド王国の守護剣の当主のデキは悪くてな……【龍牙】しかもっていない」

「倍率は確か……一・一倍でしたよね?」

「つまり、これだけをもってローズウェル家は……騎士団の守護盾と守護剣の両方の役割をこなせることになる」

「王国騎士団の両翼の……両方を担えると?」

「そういうことになるな」

 と、そこで父上はそれまで神託の部屋に入ることすら許されなかった――双子の弟のマリソンを急いで呼びつけたんだ。

 父上は子供には冷たい。

 長男の僕ですらも、儀式や式典を除いて、無駄に口をきくことすら禁じられていた状況だ。

 当然、次男以下とはほぼ会話もない。

 いや、面識すらほぼ無いような状況と言っても良いんじゃないかな?

 しかし、そんな父上が柔らかい笑みを浮かべて、双子の弟を優しく抱きしめた。

「おお、マリソン……さすがは……さすがは我が家の長男だ!」


「「「え!?」」」


 この発言には僕だけでなく、大司教様も双子の弟のマリソンも驚愕の声をあげてしまった。

「いや、長男は僕じゃないんですか!?」

「そんなものは知らん! いや、そもそもが……そ、そうだ! 記憶違いなのだ! お前等の母親の股から飛び出してきたのは……マリソンが先だ! 確か……いや、絶対にそうだった!」

 おいおいマジですか。

 そういう方向でいっちゃうんですか……と、さすがの僕も開いた口が塞がらない。

「そうだよな!? 秘書よ! そして護衛騎士共よ! お前等の中にも何人か出産の立ち合いをしてた奴いるよな!?」

 で、秘書さんやら騎士さんたちはしばらく押し黙り、そして彼らは全員コクリと頷いた。

「大司教様!? こういうことは良くありますよね? 特に問題になりませんよね!?」

「うむ……。大体……こういう時はそういうことになりがちでは……あるな。まあ、ここまで即決でこうなるのは珍しいとは思うが」

 その言葉で、父上は表情を喜びの色に染めた。