――五年前。
想いを終わらせるため、彼女に俺の気持ちを告げた。親友がプロポーズをすると知った日、親友がそれを実行する少し前のこと。
わがままな行動だった。振られて想いを断ち切るために、俺は彼女を利用したんだ……。
実るものだとは僅かでも思っていなかった告白に、彼女は頭まで下げてくれた。ありがとう、嬉しい、ごめんなさい、と。
「……私だって、いつまでもこんなんじゃいけないって思ってる」
彼女はいつからか、親友以外と歩むかもしれない未来の可能性を、否定の言葉だけは発しなくなった。
悲しみなんて少しずつ、昇華されていってしまう部分もあるんだと、笑顔だった瞬間の自分に気づき、あとで涙しながら。
そんな場面を、俺は幾度も幾度も傍で見てきた。
「ああ。解ってるよ」
知らない男と一緒に歩く彼女を見かけたこともある。親友と似た男、全く共通点の見当たらない男、普通の優しそうな男。けどその行動は、一日と保たないこともあった。
そして数多あるその男の中に、俺は決して入らない。意識してなのかそうじゃないのかなんて、それは前者に決まっているだろう。
除外されるのは自然なことだと理解し苦しくもなりながら、だからこそ立てる彼女の隣に俺は、昔と変わらない立場で寄り添ってきた。
――あの日断ち切れたはずの想いは、親友の死という、もしかしたらありふれているかもしれない特異な出来事により、心の中に残留した。
彼女も、俺に対してそうなのかもしれない。嬉しいと俺に言ってしまったことを、悔いていたりもするんだろう。
「私……っ」
言葉を遮り、懇願する。
「誰でもよくて、誰でも駄目なら、俺にしてくれ」
どうか、どうかと縋りつく。