「……ノダさん、篠田さん」
 名前を呼ばれてゆっくりと目を開ける。
「具合はどう?」
 カーテンの隙間から顔を覗かせた保健室の先生と目が合った。
 あぁ。わたし、寝てたんだ。
「……だいぶ、良くなりました」
「そう。よかった」
 開かれたカーテンの向こう側の、壁に掛けられた時計が目に入る。
 十四時五十分。
「すみません…。寝過ぎちゃいました」
 起き上がる力はまだなくて、横になったままそう答えた。
「いいのよ。それより、おうちの方に連絡したんだけど、繋がらなくて。迎えに来てもらうことはできる?」
「あ…。両親は、仕事で。たぶん、迎えは……。
でも、もう、大丈夫です。自分で帰れます」


 と、言ったものの。
 ムッとする空気がまとわりついてきて、呼吸するたびに熱気が体内に入り込んでくる。
 正直、きつい。
「……ふぅ」
 毎月やってくる、女性特有のアレのせい。
 その時々によって違うけれど、今回はひどい方だった。
 鎮痛剤はなるべくなら服用したくなかったけど、テストの最中に痛くなるのは嫌だな、と思って飲んでおいたのに。
「飲むタイミングが悪かったかな…」
 鈍い痛みが少しでも和らぐようにと、下腹部を撫でながら歩く。
 それにしても。こんなとき、ひとりきりというのはつらい。
 一緒に帰ろうと約束していた華乃も、保健室の先生の話では、「よく寝てるから、起こさずに帰ります」と言って帰ったらしい。
 三時間も寝ていたから、先に帰ってもらって正解だったけど。
 電車で気分が悪くなったらどうしよう。
 そんなことを考えながら、滲み出る額の汗をハンカチで拭った。