白いシャツ。
 白いソックスと、黒のサンダル。
 ゆっくり走る車。
 タイトルはわからないけれど、耳にしたことのある洋楽。
 ダッシュボードに置かれたおもちゃの車。
 ドリンクホルダーの、飲みかけのオレンジジュース。

 思い出すのは、あの日のこと。


 四月。わたしたちはニ年生になった。
 両親に、進級祝いに一眼レフが欲しいとおねだりしてみたけど却下された。
 相変わらず「恋がしたい」と騒いでいる華乃とはクラスが離れてしまった。
 何度か話したことのある男子が学校を辞めていた。
 
 思い通りにいかないことはたくさんあって。
 当たり前だと思っていたことが、実は、当たり前じゃなかったんだと気づいたり。
 誰かにとってちっぽけなことが、誰かにとっては涙を流すほどの苦しみだったり。
 理解したフリをして、ほんとは納得なんかしてなくて。
 うまくいかないことを受けとめて。
 受け入れるという選択肢しかないときもあって。
 だから。

 始業式に先生の姿がなかった。

 この現実をどう呑み込むべきか。
 わたしの中でいろんな感情が渦を巻いて、いろんなことを考えたのだけど。
 やっぱり、というか。
 はっきりとした答えは見つからない。