「ありえない。こんなのって、」
頭にカァッと血がのぼって呼吸が荒くなる。
華乃は大したことない、って言ってるけど、こんなのおかしい。
「とりあえず、消毒してもらおう。ね?」
華乃を連れて救護テントへと向かった。
「いたーーーい。しみるーっ」
消毒をしてもらっている間、足をバタバタさせて痛がる華乃。
ガーゼをするほどの傷ではないけど、お風呂のときは絶対にしみるだろうな。
「絆創膏、どうする?」
保健室の先生が大きな絆創膏を見せて言った。
「え。なんか、カッコ悪い」
華乃が唇を尖らせる。
「貼ってもらえば?」
「えーっ」
「いいから。貼ってもらいな」
「………わかった」
頬を膨らませた華乃の両膝に絆創膏が貼られる。
顔を見ておくんだった。学年すら確認できなかった。華乃に訊いたところで教えてはくれないだろう。
「写真撮るとき、膝は写らないようにしなきゃ」
華乃はそう言いながら、絆創膏が貼られた膝をさする。
もし次があったとしたら、わたしだって許さない。
「……あっ!置きっぱなしだ!」
先生にお礼を言った華乃が目を見開いてわたしを見た。
「なにを?」
「メガホン!」
「………ぁ、」
そうだ。気が動転していたせいで忘れてしまった。華乃が転んだ場所にメガホンを置いたまま、救護テントに来てしまった。
「行こう、」
パイプ椅子に座っている華乃の腕を掴む。
あの場所に置きっぱなしのままなわけがない。きっと誰かが拾ってる。拾って、持ち主が誰なのかを確認してる。
「本人に見られたらどうしよう。これって、ラッキーって思うべき?」
えへへと笑った華乃。
「そんなの、知らない」
能天気なことを言う華乃の手を引いて早足で歩く。
本人に見られたらどうしよう、って。ラッキーなわけないじゃない。本人じゃなくても、見られたら。気づかれたら。
………サイアクだ。