「はい、どーぞ」
 コンビニから出てきた華乃が、わたしがいつも飲んでいるレモンティーを差し出した。
「ありがと」
「どーいたしまして」
 にっこり笑った華乃は手にしていたコーラをゴクゴクと勢いよく飲んだあと、
「くぅーっ。はぁぁぁ。こんなときは、やっぱ炭酸だよね」
 と、満足そうな表情を見せる。そして。いつものように、いつものセリフを口にするのだ。

「なんであたしがあんなヤツのために泣かなくちゃいけないわけ?」
「次よ、次!さっさと次に進むしかない!」
「とりあえず、恋したい!今すぐにでも!」

 華乃と一緒に行動するようになってから何度目だろう。
 失恋をして、大泣きした直後にもかかわらず、そんな言葉を平気で口にする。
 いつも疑問に思うんだけど。「とりあえず」って、なに?
 とりあえずでできちゃう恋って、どうなのよ。


「ショウくんと付き合うことになったよ」
 華乃からそう聞かされたのは、レモンティーをおごってもらった日から一ヶ月も経たない、ある晴れた日の昼休み。
 ショウくんというのは、華乃の元カレの友達だそう。
 元カレのグチを聞いてもらううちに、「きゅんとしちゃった」らしい。
「ふぅん。よかったね」
 冷めた言い方をしたって、華乃は、うふふふふ、とご機嫌だ。
 いつまで続くことやら。
 そんなことは口が裂けても言えないから、
「浮かれすぎて赤点取らないようにね」
 とだけ言っておく。
「今回はね、ショウくんが居てくれるから、頑張れそうな気がする。あ。いらないなら、ちょうだい」
 わたしの飲みかけのりんごジュースを指さした華乃は、わたしの返事を待たずにストローに口をつけた。