課題はいつも早く終わらせるタイプ。
面倒なことはサッサと片付けてしまいたいし、ギリギリになって焦るのは好きじゃない。
「今日ヒマ?」
「ごめん。図書館で課題やるから」
だから、提出期日ギリギリになって焦る華乃からの誘いには乗らなかった。
「いらっしゃいませ。袋はどうしますか?」
「あ…。いらない、です」
図書館に行く途中に立ち寄ったコンビニ。
買ったのは、いつも手に取っていたレモンティーではなく、あの日、先生が買ってくれたオレンジジュースだ。
「……ふぅ、」
ジリジリと照りつける太陽の下、冷えたオレンジジュースをひとくち飲んだ。
いつもと違うものを手に取ったせいか、会計のとき妙に緊張してしまった。
そんなこと、誰も気にしたりしないのに。
ドキドキして、胸がざわざわと騒がしい。
冷えたオレンジジュースが胃に落ちていく感覚を意識したら、何故だかドキドキが増してしまった。
「シノちゃん、」
何か借りてから帰ろうと本棚の前をウロウロしていたとき、不意に名前を呼ばれた。
わたしをシノちゃんと呼んだ彼女、
「ヒナちゃん。……と、」
隣には、見たことのない男の子。
「あ。カレシ。ふふふ」
「そうなんだー、」
同じ中学だったヒナちゃんとは、ゴールデンウィークに一度遊んだきり。
その頃よりも、なんだか大人っぽくなっていた。
あっちに行ってる、と、気を利かせた彼氏に小さく手を振って応えたヒナちゃん。
「久しぶりだねー。今日は?華乃も一緒?」
ワンピースなんて着るようなタイプじゃなかったのに。
「ううん。わたしひとり」
「そっかー」
「彼氏、同じ高校のひと?」
「うん。クラスも一緒」
「よかったね。なんか、優しそう」
「うん。優しいよ。ふふふふふ」