おやすみ。

 よろず屋に言ったら、お店の前に看板が出ていた。
 今日はちゃんと、薬草を買いに来たんだけど。

 まあでも、スライムさんも休みたいときもあるだろう。
 しょうがないので、道具屋さんまで行くことにした。


 翌日来てみると、また、おやすみ、という看板が出ていた。
 めずらしいこともあるものだ。
 おやすみなら仕方がない。
 私は帰ることにした。


 さらに次の日、来てみると、また、おやすみ、という看板が出ていた。
 さすがになんだか変だ。
 病気になったりしたのだろうか。
 それとも、もうお店をやめてしまう?
 遠くへ商品を買いに行ったりしているのだろうか。

 私がよろず屋の前で考えていたら、急に入り口の戸が開いた。
 スライムさんだ。
「いつになったら、はいってくるんですか!」
 おこっている。

「いつって、おやすみっていう看板が出てたから。ひっくり返すの忘れたの?」
「なにをいってるんですか! よくみてください!」
 スライムさんが力説する。

 そう言われても、と看板の文字をよく見てみる。
「あれ?」
 おやすみ。
 たしかに、不安定な字でそう書いてある。
 けれども、その字をよく見てみると……。

「よろずや、って書いてある」
 私が言うと、スライムさんは満足そうにした。

 小さな、よろずや、という文字を大量に書くことで、離れて見ると、おやすみ、となっているようにしているのだ。

「どうです! すごいでしょう!」
「スライムさんが書いたの?」
「いらい、しました。500ごーるどもしましたよ!」

 料金として高いのか安いのかはわからないけれども、500ゴールドかけるほどのものかな、とは思ってしまった。言いはしないけど。

「でもこれ、おやすみ、っていう意味なのか、よろずやが営業中っていう意味なのか、わからないような……」
「しんのいみが、どちらなのか、わからないですか?」
 真の意味?
「うん。それに、離れて見る人のためにあるんだから、お客さんにはわからないかも」
「ぼくはわかりますよ」
「スライムさんは看板がなくてもわかるからね」
「へへへ」
 なんだかうれしそうにしている。

「まあどうぞ、はいってください。つまらないおみせですが」
 スライムさんがお店の中に入っていこうとする。

「スライムさん、看板」
「かんばんは、ちゃんとでてますよ?」
「もー!」

 私はもう一度スライムさんに説明をした。