コトリと音をたてて目の前にアツアツのホットココアが置かれた。
オシャレな内装とココアがマッチして令嬢にでもなった気分だ。
一口ココアを飲んで、ホッと息を着くと申し訳なさそうにしながら私は言った。
「落ち着きました。先程はすみません」
「あんなことがあったんです。貴方ぐらいの態度が普通だと思いますよ」
"アス”が、人のよさそうな笑を浮かべて優しく語りかけるように話した。
横にいるケイは、つまらなさそうにコースターを折り曲げて遊んでいる。
「あのような態度を取ってしまいお恥ずかしいです。本当にありがとうございます」
「だから、大丈夫だって。俺ら集合かかってんだ。一人で帰れそうか?」
「ケイ、急に見放すようなことは出来ない。だから、もうちょっとだけ待って。」
「大丈夫です。大通りを通って帰るので。」
コースター遊びに飽きたのか、集合のことを思い出したのか分からないが、急にケイが私たちの話に割り込ん出来た。
アスは、慌てて咎める。
私は微塵も気にしないし、むしろ早く別れて欲しい。
いくら変装してると言っても、限界がある。
メイクも落ちてしまえばおしまいだし、体型を変えるために分厚い服を着ているから暑い。
「大通りなら人が多いでしょうし、きっと大丈夫です。お父様やお母様にも説明します。」
「……分かりました。しかし辛い思いをさせてしまったのはこちらなので、私から説明します。」
そう言ってアスは、私の手を取り無理やりメモを握らせた。
メモを開いてみると、何やら住所のようなものが書かれている。
頭の中にある地図が入って確認してみたら驚くべきことがわかった。
アスは、貴族だ。
しかも、勇者ケイの遠縁にあたる。
確か貴族になる遠縁がいると直接聞いた気がする。
なんでもっと興味を持たなかったんだ。
今更後悔しても仕方ないが、過去の自分に言ってやりたくなった。
「私の住所です。予定が空いている日にいらして下さい。」
「え、待ってください!それは」
アスは話しかったことを話すとすぐに立ち上がってケイを連れて店を出ていってしまった。
アスは真面目なようだが、そこが今回ミスにつながってしまった。
お父様、お母様なんて言ったが、両親なんて覚えてなんか居ない。
冒険に出る大分前に、二人とも他界した。
家には医者を呼べるほどのお金はなかったから、理由は知らないが多分病だろう。
田舎育ちの人間は大体病気でこの世を去り、貴族は襲撃に合って死ぬ。
私の故郷では、そんな言葉が古くからあった。
まさにその通りだ。
毎日何処かで人が死んで、誰かが産まれる。
そうやってこの世は作られていく。