「特に変わったトコロは無さそうだな。すまん、悪かった。」



随分"ケイ”というこの男は酷く素直だ。
怪しいところがなくても警戒はしておくべきだと思う。ソイツが私みたいな大犯罪者でないなんて言う確証は無いのだから。


「いえ、私も自分がああなると思うと怖くて……どうすればいいんでしょうか!」



「君は犯人に狙われているのか?」



「分かりません。しかし、そんな気がしてならないのです。」



我ながら中々な芝居だと思う。
第三者からすれば、あまりの恐怖心から狂気に陥っているようにしか見えないだろう。
トドメに手を握りしめお祈りを唱える。
適当に分かりにくい東の国から聞いた言葉を並べておけば何とかなりそうだ。



「落ち着いてください。一旦、ここから離れましょう。歩けますか?」



出来ればこの2人から距離を置きたかったのだが、ここで断るのも怪しまれそうだ。
仕方なく頷いて、大人しく二人の後に付いて行った。
勿論、震える振りも忘れずにしておいた。
ここで、変に演技を中断する訳にもいかない。
これ以上厄介なことに巻き込まれないように、祈るばかりだ。