次の日。
昨日の裏路地に人集りができていた。
人を掻き分けながら何とか見える位置に来ると薄いシャツの男が倒れていた。
多分、昨日襲いかかってきた偽物貴族の男だろう。
昨日刺したナイフが刺さったまま倒れ伏している。
恐らく抜く間もなく出血多量で死んでしまったのだろう。
服は、男がしたように死んでしまったあとに誰かに剥がされてしまったようだ。
着ていたのは偽物貴族でも元の持ち主は本物の貴族だろうから、服の価値は高いと思う。
いいものを持っていればそれだけ狙われるのは当たり前だ。
上物であったのであれば換金してその日をすごせる金を得ることが出来る。
そう考え着くのは容易に予測できる。
「最近、また治安が悪くなってきているわ。もしかしたら、災悪がこの街にいるのかもしれないって言う噂よ。」
「災悪って裏切りの盗賊のことよね。怖いわね。子供に出掛けないように言わないと。もし出くわしたら……なんて考えるとゾッとするわ」
「バカバカしい。ここ数年は姿を見せてないんだろう。なら、死んだに違いない。」
「でも、神林で仕事をしていた知人が災悪に似た人物を見たって言ってました。その時は寝惚けていたんだろうと流しましたが……」
なんてヒソヒソと災悪について人が語っているのが耳に入る。
災悪とは数年前の一月一日にケイ勇者一行を暗殺したと言われている盗賊レミィのことだ。
大陸全土に平和をもたらすはずだったケイ達を暗殺したことから、災いをもたらした悪人_災悪_と呼ばれている。
「皆さん!離れてください!」
広場からこちらに向かって紅白頭の2人組の男が歩いてくる。
2人の周りには何人もの護衛が着いていて、誰一人として二人に近づけはしないだろう。
二人は、偽物貴族の亡骸を確認して手を合わせた。
「私達は、この事件の捜査を任されました!なにか情報がありましたら、私達にご連絡ください」
「もしかしてあの二人は、治安隊の隊長か」
「あの難関試練を突破したという方々があんな若いなんて……」
ヒソヒソと話している野次馬達の話で二人の正体がわかった。
この街では治安隊の編成に対する法がある。
その法では、治安隊の頭は平民出身で腕っ節であることが条件となっている。
腕っ節の判断は、治安隊の隊員全員から認められること。
要は、全員をぶちのめせばいいのだ。
そうして最少年で頭となったと噂なのが、あの二人か。
「おい!そこの野次馬!お前何か知ってるんじゃないだろうな?」
「お、お許しを……何も知らないのです」
「こら、人を脅してはダメだ。人を脅しては知っていることも怖くて話せなくなる」
まさに飴と鞭のコンビだ。
紅い頭は何も考えなしに行動しているように見えるが勘が鋭いようで、情報を持っている奴にばかり脅しをかけている。
白い頭は、紅い頭が狙いをつけたやつに歩み寄り、優しさで情報を確実に吐かせている。
このままここに居てもいいが、私に狙いをつけられても困る。
よってここから去るのが得策だろう。
「おい、そこのフードを被ったやつ!逃げようとしただろ!」
その時、紅い頭が私の方を指さした。
その場の視線が一斉に私を見た。
気配を最小限に抑えて、存在感を薄くしていたのにどうして……
「お前から、ヤバい何かを感じる」
紅い頭が私の目の前まで歩み寄ってくる。
変な真似をすれば、即座に攻撃すると言わんばかりに、殺気を漂わせながら。
「な、なぜ私なんですか!私は一般市民です!」
「そうだよ!冤罪とすればとんでもないことになる!落ち着け"ケイ”!」
「黙ってろ、アス!一応のために確認するだけだ」
ケイという聞き馴染んだ名前に、かつての仲間の顔が脳裏にチラついた。
ケイと呼ばれた紅い頭は私の目の前まで来ると「フードを取れ」と言った。
あとから慌ててやってきたアスと呼ばれた白い頭が、私に優しく「申し訳ないが、見せてやって欲しい。その後のことは私が保証しよう」と言ったので、大人しく見せた。変装した顔を。
昨日の裏路地に人集りができていた。
人を掻き分けながら何とか見える位置に来ると薄いシャツの男が倒れていた。
多分、昨日襲いかかってきた偽物貴族の男だろう。
昨日刺したナイフが刺さったまま倒れ伏している。
恐らく抜く間もなく出血多量で死んでしまったのだろう。
服は、男がしたように死んでしまったあとに誰かに剥がされてしまったようだ。
着ていたのは偽物貴族でも元の持ち主は本物の貴族だろうから、服の価値は高いと思う。
いいものを持っていればそれだけ狙われるのは当たり前だ。
上物であったのであれば換金してその日をすごせる金を得ることが出来る。
そう考え着くのは容易に予測できる。
「最近、また治安が悪くなってきているわ。もしかしたら、災悪がこの街にいるのかもしれないって言う噂よ。」
「災悪って裏切りの盗賊のことよね。怖いわね。子供に出掛けないように言わないと。もし出くわしたら……なんて考えるとゾッとするわ」
「バカバカしい。ここ数年は姿を見せてないんだろう。なら、死んだに違いない。」
「でも、神林で仕事をしていた知人が災悪に似た人物を見たって言ってました。その時は寝惚けていたんだろうと流しましたが……」
なんてヒソヒソと災悪について人が語っているのが耳に入る。
災悪とは数年前の一月一日にケイ勇者一行を暗殺したと言われている盗賊レミィのことだ。
大陸全土に平和をもたらすはずだったケイ達を暗殺したことから、災いをもたらした悪人_災悪_と呼ばれている。
「皆さん!離れてください!」
広場からこちらに向かって紅白頭の2人組の男が歩いてくる。
2人の周りには何人もの護衛が着いていて、誰一人として二人に近づけはしないだろう。
二人は、偽物貴族の亡骸を確認して手を合わせた。
「私達は、この事件の捜査を任されました!なにか情報がありましたら、私達にご連絡ください」
「もしかしてあの二人は、治安隊の隊長か」
「あの難関試練を突破したという方々があんな若いなんて……」
ヒソヒソと話している野次馬達の話で二人の正体がわかった。
この街では治安隊の編成に対する法がある。
その法では、治安隊の頭は平民出身で腕っ節であることが条件となっている。
腕っ節の判断は、治安隊の隊員全員から認められること。
要は、全員をぶちのめせばいいのだ。
そうして最少年で頭となったと噂なのが、あの二人か。
「おい!そこの野次馬!お前何か知ってるんじゃないだろうな?」
「お、お許しを……何も知らないのです」
「こら、人を脅してはダメだ。人を脅しては知っていることも怖くて話せなくなる」
まさに飴と鞭のコンビだ。
紅い頭は何も考えなしに行動しているように見えるが勘が鋭いようで、情報を持っている奴にばかり脅しをかけている。
白い頭は、紅い頭が狙いをつけたやつに歩み寄り、優しさで情報を確実に吐かせている。
このままここに居てもいいが、私に狙いをつけられても困る。
よってここから去るのが得策だろう。
「おい、そこのフードを被ったやつ!逃げようとしただろ!」
その時、紅い頭が私の方を指さした。
その場の視線が一斉に私を見た。
気配を最小限に抑えて、存在感を薄くしていたのにどうして……
「お前から、ヤバい何かを感じる」
紅い頭が私の目の前まで歩み寄ってくる。
変な真似をすれば、即座に攻撃すると言わんばかりに、殺気を漂わせながら。
「な、なぜ私なんですか!私は一般市民です!」
「そうだよ!冤罪とすればとんでもないことになる!落ち着け"ケイ”!」
「黙ってろ、アス!一応のために確認するだけだ」
ケイという聞き馴染んだ名前に、かつての仲間の顔が脳裏にチラついた。
ケイと呼ばれた紅い頭は私の目の前まで来ると「フードを取れ」と言った。
あとから慌ててやってきたアスと呼ばれた白い頭が、私に優しく「申し訳ないが、見せてやって欲しい。その後のことは私が保証しよう」と言ったので、大人しく見せた。変装した顔を。