早速後悔をした。
貴族に連れられてやってきたのは裏路地。
治安が悪いどころの話ではない。
辺りは血飛沫が飛び散っている。


「いい加減、離して欲しいのですが……」


「なあお前さ、どっかの令嬢か?」


さっきまで酔っ払っていて意識すらなさそうだったのに急に冷静にどこかの貴族が話し始めた。
内心驚きつつも、動揺を隠して冷静な振りをして答えた。


「そうでしたら何か?」


「殺されたくなかったら、大人しくしろ。」


いきなり壁に押し付けられたかと思えば、ナイフを首元に突きつけられた。
令嬢を狙った身代金目的の誘拐で間違いなさそうだな。
貴族のような服装をしているが、それは何処かで盗んできたものに違いない。
それか、辺りに飛び散っている血飛沫の主のものとかそういう感じだろう。


「おい、聞いているのか!殺されたくなかったら、両手を上げろ!」


私は大人しく両手を上げると見せかけて、胸元に隠してあったナイフを取り出して勢いよく振り下ろした。
偽物貴族の男は急なことで防御出来ずに、ナイフが肩に刺さる。


「この女!」


キレた男が私を捕まえようと手を伸ばすが、手が私に届く瞬間に腕は消し飛んだ。
男は何が起きたのか理解出来ずに唖然とするが、腕の痛みで現実に無理やり戻される。


「痛えぇぇぇえ!」


大声で喚き出した男は、腕を抑えて蹲る。
腕が吹き飛んだんだ。さぞかし痛いだろう。
しかし、私は慈悲など与える気にはならない。
私は気にも止めずに、立ち去った。