次の日。
私は宿の屋根にいた。
というのも、昨晩寝ていると襲撃者がいたのだ。
遡ること恐らくまだ酔っ払い達が騒いでいた時間帯。
窓の方からもの音が聞こえて目が覚めた。
普段は気配で起きるのだが、物音で目が覚めてしまった。反省しなければならない。
そうして窓を割ることなくやってきた襲撃者は、私の元までやってくると私の首に手をかけた。
そして、締めあげようとしてきたので手首ごと落としてやった。
突然手首が落ちたことに対してか痛みに対してか分からないが、騒ぎ出したので、猿轡をして黙らせた。
勿論、自殺用の毒物がないか確認して、保護してある。
情報をはかせなければならないし、勝手に死なれては困るのだ。
止血もして、手厚い手当もついてるので不満はないだろう。
手首に関しては自業自得だ。
というわけで、襲撃者の見張りはマジに任せて私は襲撃者を送って来た犯人について調査している。
昨日の一件からするといちばん怪しいのは勇者である。
しかし、どうしたものだろうか。
勇者に直接尋ねる訳には行かない。
そんなことをすれば、私が捕まってしまう。
被害者は、私だというのに。

「裏ルートから手を回すか……」

私は屋根から降り立つと、宿の下の階にある洋服店に入った。
店内には庶民向けの服ばかり並んでいた。
店員は二人。二人とも女だった。
適当に見繕って服を店員の一人に渡した。
そして、もう一人の店員に

「店主に会いたい」

と言った。
店員は首を傾げていたが、私の買った服を見ると首を縦に振って店の奥に通してくれた。

「こちらでお待ちください」

店員はそうして出ていってしまった。
私はソファに腰掛けて店主を待った。
室内には自慢げな男性と歳をとった男性が店の前で写っている写真が並べられていた。
そして、見たこともない武器もあった。
筒のようなものが付いていて、指がかけられそうな部分と持ち手がある。
どうやって使うのだろう。
そんなことを考えていると、ドアが開いた。
そして、写真の二人が入ってきた。

「こんにちは」

フード越しににこやかに挨拶をした。
顔なんて見えてないと思うが。
二人は軽くお辞儀をして、自慢げな男性が私の前に座った。
もう一人は後ろに控えている。

「して、お話とは?」

「それほど急がなくても大丈夫ですわ。とりあえず、私はナナと申しましょうか。」

センスを開いて口元に持っていき、ウフフと笑った。
名前を伏せることはよくあることなのか、男性たちは特に反応しなかった。

「では、ナナ様、ご依頼はなんでしょうか」

「大したことではありませんわ。私の依頼は……」